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九州大学と富士通、農業の生産性の高度化と安定化に向けて農業におけるAI活用を共同研究

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年4月13日

九州大学と富士通は、農業の生産性の高度化と安定化に向けて、農業分野におけるAI(人工知能)の活用を共同で研究する。カメラで撮影した農作物の画像を分析し、生育状態を判断し、そこから生育環境を制御することを目指す。両者が2018年4月12日に発表した。

 共同研究は、九州大学の伊都キャンパス(福岡県福岡市)内にあるスマートハウスにおいて、2018年4月から2020年3月までの2年間をかけて実施する。まずは、九州大学が持つ植物の生体計測・評価技術に、富士通の画像処理技術を適用し、カメラで撮影した植物の画像から草丈や葉数、節間の長さ、茎径などを自動計測し、生育状況を把握できるようにする(図1)。

図1:九州大学と富士通が共同で実施する農業へのAI(人工知能)適用の概念

 さらに、自動計測した計測データを、九大の植物機構モデルを組み込んだ富士通のAIエンジンで分析することで、植物の品質や収穫時期に向けて最適な環境条件を導き出し、生育状況に合わせて環境を制御する仕組みを開発する。AIに組み込む植物機構モデルは、植物理論に、光合成・転流など成長に関わる情報である「時空間変動情報」を取り入れた九大独自のものである。

 共同研究の成果は、富士通としてはグループ内の農業関連事業会社の生産現場で利用し、効果を検証しながら、農業向けソリューションとしての事業化を目指す。九州大学は、スマート農業に関する教育をアジア地域などでも実施し、成果の普及と人材育成を推進するとしている。

 ちなみに九州大学と富士通は2014年9月に、富士通研究所とともに、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所内に共同研究部門「富士通ソーシャル数理共同研究部門」を設置し、社会制度や施策のための数理技術の共同研究にも取り組んでいる。マス・フォア・インダストリ研究所は、アジアで初めて設立された産業技術に関わる数学研究の拠点である。