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長崎県五島市、鳥獣害起こす鳥獣の出没をセンサーで検知し捕獲数を5倍に

DIGITAL X 編集部
2018年4月19日

長崎県五島市は、イノシシなどによる被害を抑えるためにセンサーと位置情報を使ったシステムを導入し効果を上げている。捕獲数は、従来と比べ5倍以上に増えた。システムを納入したNTT西日本と日立製作所が2018年4月11日に発表した。

 長崎県五島市は、五島灘に浮かぶ多数の離島からなる自治体だ。その五島市でも最近、野生鳥獣による被害が増えている。食料を求めて、人が暮らす地域にも現れ出している。野生の猪が島から島に移動して獣害を起こしていることも確認した。

 一方で、鳥獣害対策に取り組める人材不足という課題もある。狩猟免許を所持する住民の高齢化が進み、鳥獣を捕獲するための人手が十分に確保できないという。

 そこで五島市が導入したのが、センサーと位置情報を利用したシステム(図1)。獣の出没を検知したら、その姿をカメラで撮影し画像をサーバーに送る「出没検知センサー」と、罠に掛かった獣を撮影し画像をサーバーに送る「捕獲検知センサー」を設置した。

図1:五島市は2種類のセンサーと位置情報を活用したシステムを導入して、現地で獣を確保する業務の効率化を狙っている

 2つのセンサーが検出したデータは、獣の確保に当たるチーム全員にメールで送られる。獣がどこに現れたのかが分かるので、捜索範囲を絞り込める。従来は、獣が現れたという住民からの通報を受けて出動し、獣の痕跡を追うといった手法で獣を探していた。

 センサーデータを得ることで、捕獲効率が大きく改善した。2017年11月のシステム導入から2018年2月までの4カ月に捕獲したイノシシの数は163頭。前年同期間の捕獲数は30頭だったので、システム導入により確保数は約5.4倍に増えた(図2)。

図2:システム導入後4カ月の確保数が前年同期比で5倍以上になった

 出没検知センサーは市街地にも設置しており、獣がよく出没するエリアの特定が容易になり早期の捕獲が実現している。市街地では獣が人を傷つける事故も発生しやすいだけに、そうした事態を未然に防げていることになる。

 システム導入後は、獣の出没傾向を把握できるようになり、捕獲計画を立てやすくなったとしている。また、センサーデータから鳥獣の出没地点を示す管理者向け画面の情報は、そのまま印刷して住民への公開情報にしたり、長崎県への報告文書に利用したりしている、鳥獣対策に関係する文書の作成が容易になったという。

 システムを構築した日立製作所は、五島市に提供したシステムのうち、センサーデータを集約し対象の存在位置を地図上に表示するシステムをクラウドサービスとして商品化し、2018年度中に提供を始める予定である。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名長崎県五島市
業種公共
地域長崎県五島市
課題野生の鳥獣の生息域が拡大し、農作物被害が深刻化している。一方で狩猟免許所持者の高齢化が進み捕獲者の確保が難しくなっている
解決の仕組み獣を撮影するセンサーを設置し、獣がいる可能性が高い位置情報を猟師に提供することで、獣を確保できる可能性を高める
推進母体/体制長崎県五島市、NTT西日本、日立製作所
活用しているデータ獣の画像データ、設置したセンサーの位置情報
採用している製品/サービス/技術獣の出没を検知したらその姿を撮影する「出没検知センサー」と、罠に掛かった獣を撮影する「捕獲検知センサー」(NTT西日本製)、センサーの検出情報とセンサーの位置を地図上で一覧可能にするシステム「鳥獣害対策用GIS」(日立製作所製)
稼働時期2017年11月