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長野県中野市とJA中野、ぶどう農家の継続的成長に向けIoTを導入

DIGITAL X 編集部
2018年5月1日

長野県長野市と中野市農業協同組合(JA中野市)は、市内のぶどう農家が良質なぶどうを栽培し続けられることを支援するためにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みを利用する。「良いぶどう」の栽培方法を数値として残すことで、後継者などへの技術継承も狙う。システムを納入したNTT東日本が2018年4月27日に発表した。

 長野県の北東部に位置する中野市の気候は、昼夜の気温差が大きく降水量は全国平均よりも少ない。これは果樹栽培に適しており、ぶどうやりんご、桃、プラムなどを生産している。なかでも、ぶどうでは巨峰の産地として知られ、県内でお1位、2位を競う生産量を持つ。

 一方で、農業への就業人口は減少する一方。その対策の1つとして中野市のぶどう農家は、勘と経験に頼る栽培からの脱却を目指している。これに対し中野市農業協同組合(JA中野市)は、高品質なぶどうを安定して生産できる体制作りをシステム面から支援する。具体策として、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みを2018年3月から導入し始めた。

 支援策の1つは、栽培方法のデータ化。栽培のためのデータを蓄積し、数値に基づく栽培方法を確立すると同時に、後継者や新規就農者への栽培技術の継承にも役立てる。

 データ化に向けては、ぶどうを栽培するビニールハウス内に、温湿度や、土壌水分、日射量などを測定するセンサーを設置。データはクラウドに送信し、グラフなどの見やすい形に整形して、ぶどう農家に提示する(図1)。

図1:圃場に設置したセンサーの検出値を見ながら、ぶどうを栽培する

 同時に、JA中野市が作物や品種の別に保有する、育て方や季節ごとの温度管理といった「教師データ」と、センサーデータを照らし合わせることで、より高品質なぶどうを栽培できる仕組みを構築する。

 もう1つのシステムは、ネットワークカメラによるほ場の監視。作物の育成状態を画像で確認するほか、ビニールハウスの開閉状態の確認や、収穫時期の盗難対策にも役立てる。

 IoTの検証に参加してきたぶどう農家は「温度、土壌水分量、日射量などハウス内の状況をいつでもスマホで確認できるため、夜もゆっくり眠れ、身体にかかる負担が軽くなった」としている。

 IoTとネットワークカメラを使った仕組みは、NTT東日本が構築した。同社の「ギガらくWi-Fi」をIoTゲートウェイとし、センサーやネットワークカメラなどを接続。クラウドでのデータの可視化や、システムの運用サポートをセットにした農業向けパッケージ商品をベースにしている。

 NTT東日本は今後、中野市での知見を活かし、長野県における農業IoTのモデル事業に位置付け、同県内の農業での利用をうながしたい考え。同人農業以外へのIoTの展開も図る。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名長野県中野市、中野市農業協同組合(JA中野市)
業種農林水産
地域長野県中野市
課題良質なぶどうを継続的に生産できるようにしたい
解決の仕組みブドウ栽培にIoTの仕組みを適用し栽培方法や条件の数値化を図り、経験と勘に頼った生産から脱却する
推進母体/体制中野市、JA中野、NTT東日本長野支店
活用しているデータ圃場の温度、湿度、日射量、土壌水分量などのデータ
採用している製品/サービス/技術無線LAN通信機能付きセンサー、無線LANゲートウェイ「ギガらくWi-Fi」、データ分析用クラウド(NTT東日本製)
稼働時期2018年3月30日