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日本ミシュランタイヤ、新発想のトラック/バス用タイヤの普及に向けIoTでパンクを監視

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年5月2日

日本ミシュランタイヤは2018年6月1日、トラック/バスを対象にIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みを使ったタイヤ管理システムの提供を開始する。大型車の後輪で一般的なダブル(二重)タイヤをシングルタイヤに置き換える横幅が広いタイヤ「X One」の普及をうながすのが狙い。タイヤメーカーとしてIoTを使った仕組みの実用化は、これが日本初という。2018年4月26日に発表した。

 日本ミシュランタイヤの「X One」は、一般的なタイヤよりも横幅が広いトラック/バスの後輪専用タイヤ。一般に大型トラック/バスの後輪は、2本のタイヤを重ねて装着するダブルタイヤになっている。X Oneは、これを1本で置き換えるためのタイヤで、車両重量の軽量化や車両の低重心化などが図れる(図1)。国内では、三菱ふそうトラック・バスがX Oneをオプションタイヤに採用している。

図1:「X One」タイヤでは、ダブルタイヤをシングルにすることで軽量化や低重心かを図る

 車両重量の軽量化は、最大積載量(車両総重量から車両重量と乗車定員×55kgを引いたもの)の増加につながるため輸送効率が高まる。タイヤ本数が減ればメンテナンスコストも下がるとしている。ただ、ダブルタイヤなら1本がパンクしても、しばらく走行できるが、シングルタイヤはパンクすれば走行できなくなる。この点が、X One導入を検討する物流会社などの懸念材料になっていた。

 そうした懸念を払拭するために日本ミシュランタイヤが投入するのが、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みを使ったタイヤ管理システム「ミシュランTPMS(タイヤプレッシャーモニタリングシステム)クラウドサービス」。タイヤホイールに取り付けたセンサーで、空気圧と内部温度を測定。それぞれが基準値を外れると警報を発する。タイヤの状況は、ドライバーのほか、運行管理者がスマートフォンやタブレット端末、PCなどから一元的の監視できる(図2)。

図2:ミシュランTPMSクラウドサービスの画面例

 さらに、タイヤの異常検知は、タイヤの販売店やミシュランのヘルプデスクサービス「レスキューネットワーク」にも、車両の位置情報や装着しているタイヤ情報とともにメールで送信されている。ドライバーや運行管理者がヘルプデスクに修理などを依頼すれば、最寄りの販売店が現場に迎えるため、修理などにかかる時間を短縮できるとしている。

図3:ミシュランTPMSクラウドサービスの概要。タイヤの空気圧や内部温度が設定値を超えるとドライバーや運行管理者に警告を発すると同時に、タイヤ販売店やミシュランのヘルプデスクにもメールを送信する

 TPMSクラウドサービスは、ソフトバンクのクラウド環境を使って提供する(図3)。両者は2016年から協業し、実油化に取り組んできた。車両には、タイヤホイールに付けるセンサーやセンサーデータを集約する仕組みと、通信ゲートウェイを搭載する。センサーデータを集約する仕組みは仏オレンジ製の「TPMS HT430」を、通信ゲートウェイには台湾ADLINK製の「MXE 110i」を採用している。

図4:ミシュランTPMSクラウドサービスのシステム構成の概要

 TPMSクラウドサービスの利用料は、X Oneを装着した大型車でセンサーを6個取り付けた場合に、月額通信費が980円(税別)、車載端末などのリース料(2年)が9200円(同)からになる。別途、車載端末などの取り付け工賃がかかる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日本ミシュランタイヤ
業種製造
地域東京都新宿区
課題トラックやバスの後輪をダブルタイヤからシングルタイヤに変える新製品「X One」を普及させたいが、シングルタイヤにはパンクに対する懸念があるため、それを払拭したい
解決の仕組みタイヤのパンクを事前に検知し保守したり、万が一パンクしても早急に修理に駆けつけられる体制を整備する。そのためにタイヤの空気圧を温度をセンサーで監視する。
推進母体/体制日本ミシュランタイヤ、ソフトバンク
活用しているデータタイヤの空気圧と内部温度、車両番号、車両の走行位置など
採用している製品/サービス/技術IoT対応クラウド(ソフトバンク製)、タイヤモニタリングシステムHT430(仏オレンジ製)、通信ゲートウェイMXE 110i(台湾ADLINK製)
稼働時期2018年6月1日