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青森県産業技術センター、トマトの収量向上に向けビニールハウス内の環境データを分析

DIGITAL X 編集部
2018年7月3日

青森県産業技術センターが、トマトを栽培するビニールハウスに環境センサー設置し、測定データを分析する実証実験を2018年6月12日から始めている。分析結果に基づきハウス内の環境を制御しトマトの収量増大などを狙う。分析システムの構築や実験の実務を担当するジョイ・ワールド・パシフィック(jwp)と、無線通信環境「sigfox」を提供する京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が2018年6月12日に発表した。

 今回の実験は、青森県産業技術センターの工業総合研究所と農林総合研究所が協力し、興農ファームあおもり(田舎館村東光寺)と、農総研の施設園芸部(黒石市田中)のビニールハウスで実施する。

 ビニールハウスには環境センサーを設置し、室内の温度や湿度、日射量、二酸化炭素濃度などを測定する。計測データを基にドライミストなどの機器を制御することで栽培環境を適切に保ち、収穫量を30%高めることを目指す(図1)。加えて、人的工数や機器の導入・運用コストの削減も狙う。AI(人工知能)を使った予測や警報の発信のあり方なども検証する。

図1:トマトのビニールハウス栽培の最適化に向けた実験システムの概要

 トマトの収穫量は、栽培環境に依存する。たとえば高温による花芽(かが:花を咲かせて後に実になるもの)が落下したり、実が避けたりしてしまう。こうした現象を防ぐために、従来は農作業者が巡回し栽培環境を計測・管理してきたが人的工数がかかる。圃場が大規模になるほど作業負担も大きくなる。

 近年は環境センサーを設置しデータを集約・蓄積するシステムが登場しているが、センサーデータをサーバーに送信する無線環境によっては、コスト負担が大きくなることがあった。

 今回の実験では無線環境に、LPWA(Low Power Wide Area)無線通信技術の1種である「Sigfox」を使用する。センサーデータをSigfoxでクラウドに送信し、サーバーに蓄積・分析する。Sigfoxは仏Sigfoxが開発した無線通信技術で、送信できるデータ量を抑えることで、広範囲の通信をLTEや無線LANよりも低いコストで実現できるとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名青森県産業技術センター
業種農林水産
地域青森県黒石市ほか
課題トマトの栽培にはビニールハウス内の環境管理が欠かせないが、人手による巡回では工数がかかり作業負担も大きい
解決の仕組みビニールハウス内に環境センサーを設置し、データに基づいて環境を制御する。データの通信環境には通信コストが安価なSigfoxを利用する
推進母体/体制青森県産業技術センター工業総合研究所と農林総合研究所、興農ファームあおもり、ジョイ・ワールド・パシフィック(iwp)、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)
活用しているデータビニールハウス内の温度・湿度・日射量・二酸化炭素濃度などのデータ
採用している製品/サービス/技術LPWA通信技術Sigfoxの通信機能を持つ環境センサー、センサーデータを蓄積して分析するソフトウェア「jwp IoT Platform」(ジョイ・ワールド・パシフィック製)、Sigfoxの基地局(京セラコミュニケーションシステム製)
稼働時期2018年6月12日~10月31日まで