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冷凍トラック専門レンタルのA-TRUCK、1000台超の駐車状況をRFIDタグで把握
輸送用パレットのシステムを4カ月でカスタマイズ
種々のシステムを検討後にA-TRUCKが採用したのは、小型RFIDタグ(ICタグ)をトラックに搭載し、どの駐車場内に停車しているかどうかだけを把握する仕組み。物流機器レンタルを手がけるユーピーアール(upr)が物流用パレットの管理システムとして提供するクラウド型サービス「スマートパレット」を、物流関連システムを開発するJ.C.O.Sがカスタマイズした。
スマートパレットは、920MHz帯の電波を利用する小型のRFIDタグを使って大量の輸送用パレットを管理するための仕組み。そのRFIDタグを、敷地外へ出ることが多いトラックの特性に合わせて、電波の発信方法を工夫するなどして最適化した。内蔵電池のみで稼働し、トラックへの装着もRFIDタグを置くだけ。「電池交換なしで10年以上、連続使用できる」(upr常務取締役コネクテッド事業本部長 中村 康久氏)という。レンタル状況の変化や中古車として販売する際にも、取り付けや取り外しといった手間がほとんどかからない。
RFIDが発する信号を受信するためのアンテナのカバー範囲も最大半径300メートルと広く、1台のアンテナで駐車場全体をカバーできることもメリットだった。具体的には、2000坪ある駐車場1カ所につき、設置した1台のアンテナで100台分以上のRFIDタグを一括で検出している(写真2)。
システムは月額課金型で提供され、RFIDタグを含めた1カ月の利用料金はタグ1つにつき800円程度。「人件費との比較で言えば、トラック1台当たりにかけられるITコストは月1000円以内」(菅野氏)という予算にも収まった。
2018年春にスマートパレットの存在を知った後は、RFIDタグのパレット用途からトラック用途へのカスタマイズを開始。2018年5月からテスト導入による検証にも取り組み、2018年7月から本番運用を開始した。開始時点でアンテナを設置したのは、全国8拠点、13カ所にある駐車場。電源の確保が困難な駐車場では、J.C.O.Sのソーラー発電システムを組み合わせることで対応している。
RFIDタグが発するデータは、アンテナからモバイルネットワークを通じてクラウドにアップロードされる。A-TRUCKの社内では、社屋から離れた場所にある駐車場はもとより、全国の駐車場に、どのトラックが駐車しているかを把握できるようになった。
トラックの付随パーツの管理にもRFIDを適用
現在の利用状況は、車両がその駐車場内にあるかどうかだけをデータで確認している。駐車場内での車両の駐車位置などは別途、目視などで確認しているものの、その頻度は1カ月に1回程度に減った。車両管理業務が「ほぼ30分の1の時間で済むようになった」と、菅野氏は、その成果に満足げだ。
全国の駐車場の状況を一元的に管理できることから、地域ごと、季節ごとの需給変動によって発生する在庫不足に対しても、それが予想される段階で、駐車場間でトラックを移動させておくなど、従来は実施しにくかった改善策にも容易に取り組めるようになってきた。
さらに、トラックの荷室に取り付ける間仕切りパネルの管理にもRFIDタグを取り付けることにも着手した(写真3)。間仕切りパネルは、冷凍機能付きのトラックに装着することで、荷室を冷凍室と冷蔵室に分割するためのもの。本来はトラック返却時に取りはずすべきものだが、搭載したまま離れた駐車場に移動してしまい所在が分からなくなることがあった。内蔵電源のRFIDタグであればパネルへの装着も容易なことから、その応用でパネルの所在確認に使えることに気付いたという。
菅野氏は、「RFIDのようなシステムを取り入れ、その成果を体感することで、現場からは次の要求が出てくるだろう。その際には、テクノロジーはさらに発展しているはず。その時々に最善策を選べばよい」と話す。A-TRUCKは、さらなる業務改善に向けてシステム活用を検討し続ける方針だ。
企業/組織名 | A-TRUCK |
業種 | トラックレンタル |
地域 | 千葉県船橋市 |
課題 | 1000台超のレンタル用トラックの駐車場所が分散し、正しい駐車場所の把握、すなわちレンタル可能な車両の在庫管理に手間がかかっていた |
解決の仕組み | トラックに内蔵電池で動作するRFIDタグを搭載し、駐車している駐車増を無人で管理する |
推進母体/体制 | A-TRUCK、J.C.O.S、ユーピーアール |
活用しているデータ | トラックに搭載したRFIDタグが発するデータ |
採用している製品/サービス/技術 | クラウドサービスの「スマートパレット」(ユーピーアール製)をカスタマイズ |
稼働時期 | 2018年7月 |