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冷凍トラック専門レンタルのA-TRUCK、1000台超の駐車状況をRFIDタグで把握

日沼 諭史(ライター)
2018年8月3日

冷凍機能を持つトラックに特化したレンタル事業を展開するA-TRUCKは2018年7月1日、駐車場内での車両管理にRFIDタグ(ICタグ)を使った仕組みを稼働させた。同社が保有するトラックの台数は1000台を超える。駐車中のトラック管理は、多くの企業にとっての在庫管理に相当する。トラックという大型商品特有の課題を抱える同社業務の効率を高めることで、レンタル車両の回転率向上を図る。

A-TRUCKが貸し出す冷凍・冷蔵トラック。各車両にRFIDタグを搭載し駐車状況を管理する

 千葉県船橋市に本社を置くA-TRUCKは、冷凍・冷蔵機能を持つトラックを専門に扱うレンタル会社。食の安心・安全に対するニーズや関心の高まりから、配送中の温度管理を含め、冷凍・冷蔵機能を備えたトラックの需要が高まっている。同社本社業務部総務の菅野 哲朗氏によれば、「昨今の温暖化による夏場の配送に加え、クリスマスケーキやおせち料理など、冬場にも冷凍・冷蔵が不可欠な商品が増えている」

発注してもすぐに納車されないトラックをレンタルで提供

 であるならば、食品配送などに特化した物流会社自身が、冷凍・冷蔵機能を持つトラックを自社保有し運行すれば良い。なぜレンタルの需要があるのか。その理由を菅野氏は「冷蔵という特殊な機能を持つトラックは、発注から納車まで1年以上かかるのが一般的。配送量が急増した際の車両増や、事故で車両が使えなくなった際の代車など、すぐに利用できるトラックが必要なケースは少なくないため」と説明する(写真1)。

写真1:A-TRUCK 本社業務部総務の菅野 哲朗 氏。右手に持っているのが車両管理用のRFIDタグ

 加えて最近は、食品配送のイメージ向上から「トラックの外観もきれいなことが求められるようになってきた。企業によっては、汚れていたり凹んでいたりするトラックでの配送を受け付けないところもある」(菅野氏)。外観が整備されたトラックのニーズも高まっているというわけだ。

 こうしたニーズを先取る形でA-TRUCKは、冷凍・冷蔵機能を備えるトラックを先行発注し、レンタル用途に所有。さらに上記の理由から中古車需要も旺盛なことから、レンタル車両は2〜3年をメドに中古車として販売する。これによりA-TRUCKは、常に最新車両をレンタルできるというサイクルを確立している。

 需要の伸びに合わせて拡大してきた保有車両は現在1000台を超え、業界トップクラス。繁忙期には、その7割ほどが常時稼働する。営業拠点も、千葉、埼玉、神奈川の関東圏のほか、名古屋、大阪、九州へと広がった。

実際の駐車場は目視で確認してきた

 所有車両数や営業拠点の増加に伴って不可欠なのが駐車場の確保だ。乗用車などのレンタル店舗であれば、街中で見かけるような駐車スペースで足りるだろう。しかし、12トン車などを含めた大型トラックを数十台以上の規模で駐車しようとすれば、操車スペースを含めて、広い駐車スペースが必須になる。条件を満たす土地の確保が容易ではないこともあり、必然的に駐車場は、営業所からも離れた場所に散在することになる。

 つまり、レンタルできるトラックの管理とは、トラックが所定の駐車場内に停められているかどうかを正しく把握することにほかならない。A-TRUCKではこれまで、従業員が毎日のように離れた所にある駐車場まで足を運んで目視で確認してきた。在庫状況を用紙に手で書き込むという手法を採っていたこともあり、記入ミスもたびたび発生していたという。

 そこで同社は、2年ほど前から車両の在庫を正確かつ効率的に管理できる仕組みを検討してきた。2〜3年でレンタルを終え、中古車として販売するというサイクルで車両を入れ替えているとはいえ、現在も毎月30〜40台のペースで新車を導入している。管理すべき台数が2年で倍増する勢いであり、駐車場での目視によるトラック管理が負担になることは目に見えていたからだ。

 物流関連の展示会なども巡り、さまざまなシステムの提案も受けた。GPS(全地球方位システム)を用いるもの、カメラ画像を認識するもの、QRコードとスマートフォンを組み合わせるもの、ETC方式のゲートを利用するものなどである。ただ、いずれの仕組みも、「トラック」という大型車両を遊休地などを使った駐車場に停めるというA-TRUCKのニーズには合致しなかった。

 たとえば、GPSを用いる仕組みでは、「車両の走行経路がすべて把握できることが強調されたりしているが、顧客がどこを、どう走ったかという情報は当社には必要ない。データを管理するために業務が増えるようでは本末転倒だ」と菅野氏は話す。

 その他の仕組みも、「物流センターなど、トラックの走行経路が決まっており、ゲートなども必ず直進状態で通過するといった環境が前提になっている。当社のような駐車場の環境では認識率が確保できないものも少なくない。いずれも高価で、スタッフの人件費程度という条件を満たせない。当社の顧客である物流業向けのシステムはあっても、トラックレンタル業向けのシステムはなかった」と、菅野氏は多くのシステムが採用に至らなかった理由を説明する。