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「近大マグロ」の近畿大学水産研究所、マダイの養殖における稚魚の選別作業にAIを利用

DIGITAL X 編集部
2018年9月5日

マグロの養殖で知られる近畿大学水産研究所が次の研究の柱の1つにすえるのが「マダイ」。その稚魚の選別にAI(人工知能)の技術を採り入れた。適切な量の稚魚が流れるように制御することで作業者の負担を軽減する。2018年8月21日に発表した。

 近畿大学水産研究所は現在、研究の一環としてマダイの稚魚を生産し、全国の養殖業者に販売している。その数は年間約1200万尾に上り、日本におけるマダイの生産量の24%に相当する。

 マダイの稚魚の出荷では、選別作業が課題になっていた。ベルトコンベアで流れてくる稚魚を作業員が目視で確認し、生育不良など出荷基準に満たない魚を取り除いていたため、作業員の体力消耗が激しかった(図1)。

図1:稚魚選別作業の様子

 今回、稚魚を、いけすからベルトコンベアに流すポンプの流量を制御するシステムを構築した。カメラでベルトコンベア全体を撮影し、その画像からコンベア上の魚影の面積と隙間の面積を画像分析で割り出し、同時に一定面積当たりの稚魚数も算出する。

 その上で、作業担当者の作業内容を機械学習モデルに学習させ、選別作業が効率よく進む稚魚の数を割り出し、ベルトコンベアに稚魚を流すポンプの流量を調節することで最適化を図る(図2)。

図2:ベルトコンベア上の稚魚の数を機械学習で割り出して、ポンプ流量を調節する

 現在は実証実験段階で、システムの効果などを検証している。今後は、稼働データを収集し、分析結果に基づいてシステムを改良していく。2019年3月までに本番稼働させたい考えだ。次の段階では、作業員が担当している稚魚の選別作業も画像解析と機械学習によって自動化を図る計画を立てている。

 画像分析などには、Microsoftが提供するAIサービス「Cognitive Service」や、機械学習サービス「Machine Learning」を採用。豊田通商と日本マイクロソフトがシステム構築に参画した。豊田通商は、水産研究所とのマグロの完全養殖事業などに長年携わっており、そこでの知見から自動化システムのハードウェア設計とプロトタイプを構築した。日本マイクロソフトはポンプの流量調節をリアルタイムで自動化するシステムを設計・開発した。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名近畿大学水産研究所
業種教育
地域和歌山県白浜町
課題養殖するマダイの稚魚を目視と手作業で選別しており、作業員にかかる体力的負担が大きい
解決の仕組み稚魚が流れるベルトコンベア全体をカメラで撮影し、その画像分析と機械学習によって、作業者の能力に応じた数の稚魚が流れるように流量を調整する。
推進母体/体制近畿大学水産研究所、豊田通商、日本マイクロソフト
活用しているデータベルトコンベア上を流れる稚魚を撮影した画像
採用している製品/サービス/技術IoT向け機能群「Microsoft Azure IoT」、AIサービス「Microsoft Cognitive Services」、機械学習サービス「Azure Machine Learning」(米Microsoft製)