• News
  • 交通

JR東日本、「モビリティ変革コンソーシアム」で8種の実証実験を実施

DIGITAL X 編集部
2018年9月25日

Smart City:駅につながるスタジアムやオフィスなども対象に

 Smart City WGが実施する実証実験の1つは、「駅からはじまるスポーツのまち」。幹事はシスコシステムズが務める。駅からスタジアムまでの歩行路で、デジタルサイネージや個人が持つスマートフォンにさまざまな情報を配信する(図4)。駅とスタジアムの往復路での情報配信によって街歩きを楽しんでもらう試みとしている。

図4:スタジアムと駅の間を歩く歩行者のスマートフォンとデジタルサイネージにさまざまな情報を配信する

 実験は2018年9月からの予定で、場所はZOZOマリンスタジアムと海浜幕張駅の周辺。デジタルサイネージは駅改札内とスタジアム内の2カ所に設置する。スポーツチームの情報や、周辺の飲食店・小売店情報などを配信して、地域商店街の活性化と駅の混雑緩和を目指す。

 2つ目は「センサ取得データの解析による快適性向上とコスト最適化」。幹事は日本マイクロソフトが務める。ビルなど多くの人間が利用する空間に、温湿度センサーや画像解析技術を活用し、その場にいる人々が快適と感じる環境を作りながら、エネルギー消費量を抑える。

 最大のポイントは、画像解析技術によって、その場にいる人々の温湿度に対する感情を分析し、データ化すること。同データに実際の温湿度データを組み合わせて分析し、結果に応じて空調設備の運転状態を制御する(図5)。

図5:画像解析技術で、その場にいる人々の表情や着衣、感情などを分析し、空調機器の効率の良い運転に役立てる

 実験は2018年10月から、JR東日本あるいは、グループ会社のオフィスで実施する予定だ。

ロボット活用:ドローンで撮影する画像分析などを活用

 ロボット活用 WGがが実施する実証実験の1つは「河床解析業務を対象とした測深技術についての検証」。幹事は沖電気工業が務める。河川にかかる橋梁の橋脚近辺の水深を、専用機器を搭載したドローンで計測する(図6)。河床までの水深計測には、水中に放射した音波の反射波を受信して計測する測深装置を使用する。

図6:ドローンに搭載した測深装置が発する音波を利用して水深を測定する

 測深装置を搭載したドローンを利用することで、時間と手間がかかっている河床の測深作業の効率を大きく高めること狙う。実証実験は2019年1月に、JR東日本の施設で開始する予定である。

 2つ目は「塗装・素地調整業務における自動化・効率化の在り方の検証」。積水化学工業が幹事を務める。高架橋改修などの際に塗装が必要になると、仕上がりを良くするために塗装面(素地)を研磨する。この処理を自動的に済ませるロボットの開発を目指す(図7)。ロボットには素地研磨の仕上がり状態を定量化するためにセンサーを内蔵する。

図7:将来は、足場を設置することなく素地研磨ロボットを利用できる施工方法の確立を目指す

 このロボットを利用することで、自動的に定量的かつ効率の良い作業が可能になる。将来は、高架橋に足場を設置することなく素地研磨を可能にする施工方法の確立を目指す。開始時期は2018年11月で、場所はJR東日本の施設を予定している。

 3つ目は「ドローンのメンテナンス作業への活用についての検証」。幹事はKDDIが務める。カメラとLTE通信機能を搭載したドローンを利用して、線路内作業の安全確認や架線や送電線などの電気設備の整備作業の効率化を目指す(図8)。

図8:カメラとLTE通信機能を搭載したドローンを活用して、線路内作業の安全確認や架線などの電気設備の整備作業を効率化する

 線路内作業の安全確認では、作業開始時と作業終了時にカメラで線路上の画像を撮影し支障物などがないことを確認する。架線などの電気設備の整備作業では、上空を飛ぶドローンから架線などの電気設備の状況を撮影し、画像から不具合カ所を特定する。実証実験の開始時期は2019年1月の予定で、場所はJR東日本の施設を予定している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名モビリティ変革コンソーシアム(JR東日本)
業種交通
地域東京都新宿区
課題事業のサービス化を進めるに当たり、鉄道や駅にとどまらず、新たな移動のためのサービスや街全体に向けたサービスを提供したい
解決の仕組み「モビリティ変革コンソーシアム」を設置し、関連企業や大学などと連携し、実証実験によって、各種のビジネスモデルやテクノロジーを検証する
推進母体/体制モビリティ変革コンソーシアム(JR東日本が設立。2018年9月時点で120超の企業・団体が参加)
活用しているデータ鉄道の運行や施設の運営で得られるデータのほか、各種モバイルサービスの利用データやドローンで撮影した画像データなどさままなデータ
採用している製品/サービス/技術モビリティ変革コンソーシアムに参加する企業や団体が保有する各種のテクノロジー
稼働時期シェアサイクルを対象とした実証実験は2018年8月30日に開始、他の実証実験は2018年10月以降に開始