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THK、サービス事業拡大に向け自社部品をセンシングするIoTサービスを投入

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年10月23日

直線運動をガイドする「LM(Linear Motion)ガイド」やボールネジなど機械を動作させるのに必要な要素部品を製造・販売するTHKは、サービス事業の拡大に向けてIoT(Internet of Things:モノのインターネット)市場に参入する。そのためにNTTドコモと米シスコシステムズと協業すると2018年10月18日に発表した。

写真1:THKの新サービス「OMNI edge」の提供に向けては3社が協業する。左からNTTドコモの取締役常務執行役員 法人ビジネス本部長の古川 浩司 氏、THKの取締役 専務執行役員 産業機器統括本部 統括本部長である寺町 崇史 氏、シスコシステムズの執行役員 最高技術責任者 兼 最高セキュリティ責任者である濱田 義之 氏

 THKが提供する「OMNI edge」は、製造業を対象にしたIoT(Internet of Things:モノのインターネット)サービス。THKが製造する直線運動ガイドの「LM(Linear Motion)ガイド」やボールネジにセンサーを取り付け、そのデータを分析することで異常や故障の発生を予知し、事前の保守サービスなどにつなげる。

 THKは成長戦略の中で「サービス化」を掲げており、OMNI edgeは、その具体策1つになる。2019年2月から、実ユーザー50社とともに無償トライアルを実施し、2019年春の商用化を目指す。無償トライアルの参加企業は、2019年1月31日まで募集し、選定する。

 OMNI edgeの仕組みは、THK製のLMガイドやボールネジにセンサーを取り付け、そのデータを「アンプ」経由でケーブルで、シスコ製の製造業向けルーターに接続。そこからドコモの携帯電話通信網を使ってクラウドに送り、データを分析する(写真2)。製造業が求めるグローバル化に対応するためにドコモの通信網を、IT知識を不要にするためにシスコの仕組みを、それぞれ採用した。

写真2:THKの新サービス「OMNI edge」のシステム構成機器。左からセンサーを付けたLMガイド、ケーブルとアンプ、無線ルーター。ネットワーク構成は自動で設定され、モバイルアプリ(右上)から確認できる

センサーデータの分析技術を確立

 新サービス投入に向けTHKは、センサーで取得したデータから、LMガイドやボールネジの摩耗やオイル切れといった症状を把握する技術を確立した。2年ほど前から、同社の制御システム部門などを中心に研究開発してきた。

 たとえば、LMガイドには振動センサーを取り付ける(写真3の左)。そのデータからは、LMガイドの劣化診断だけでなく、その上で動作している製作機械などの不良も検知できると見る。LMガイドは、各種製造装置や電動シートなどにも組み込まれるほか、ロボットなどの装置を移動させるための土台として設置されているため、LMガイド上で動作する機器が発する異常な振動も把握できるからだ。

写真3:センサーを付けたLMガイド(左)とボールネジ。ボールネジ用センサーは直づけされているが、後付けできる形状に変更し、保守性を高める計画だ。

 THKは、OMNI edgeを中小の製造業向けサービスに位置付ける。中小企業は装置メーカーとも保守契約を結ぶケースもあるが、装置寿命を高めたり精度を高めたりするために、直線運動ガイドやボールネジなどを独自に取り替えたりするため、装置要素部品を提供するTHKとも直接的な取引関係が生まれるからだ。

 中小企業向けに提供するためにOMNI edgeでは、ネットワーク設定などIT関連ノウハウを不要にする。具体的には、シスコのネットワークオーケストレーションの技術を利用し、導入企業がルーターなどを現場に設置するだけで、その企業専用の閉域ネットワークを自動で設定する。

 THKの取締役 専務執行役員 産業機器統括本部 統括本部長である寺町 崇史 氏は、「製造現場のIoTへの期待は高いが、ITに対する専門知識が必要なほか、機器の設置・運用コストも高く、中小企業などには敷居が高い。これはIoTが進んでいるというドイツなどでも共通だ。OMNI edgeではITを意識しないIoT環境を提供したい」と説明する。

 サービス開始後は、他のセンサーから得られるデータの統合や、その分析を可能にするほか、不良余地以外のデータ活用アプリケーションなども順次提供していく計画だ。

##表則

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名THK
業種製造
地域東京都港区
課題サービス事業を拡大し企業の成長を図りたい
解決の仕組み自社製品に取り付けたセンサーから得られるデータを分析し、異常や故障の発生を予知し予防保守などにつなげる
推進母体/体制THK、NTTドコモ、シスコシステムズ
活用しているデータ直線運動ガイド「LMガイド」やボールネジに取り付けたセンサーで取得するデータ
採用している製品/サービス/技術センサーデータから異常を予知する分析技術(THK製)、グローバル対応の無線通信ネットワーク(NTTドコモ製)、産業向け無線LANルーターやネットワークのオーケストレーション技術(シスコシステムズ製)、
稼働時期2019年2月から50社と無償トライアルを実施し、2019年春から商用化する予定。