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シダックス、ホテル事業拡大で頼むAIスピーカーとチャットボットの自動翻訳

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2018年10月30日

食と健康を中心に各種サービス業を手がけるシダックス。同社が次の事業の1つに位置付けるのがホテル事業である。海外旅行者などの増加を期待する一方で、多言語対応という課題もある。その解決策としてAIスピーカーとチャットボットによる自動翻訳の仕組みを活用する。

 給食事業を軸に、カラオケやフィットネスクラブ、エステティックなども展開するシダックスグループ。既存業態の中には店舗数を減らしている事業もあるなかで今後、店舗数を増やす事業の1つがホテル事業である。

 同社のホテル事業はこれまで、静岡・伊豆に2000年に開業したワイナリー併設のリゾートホテル「中伊豆ワイナリーヒルズ」のみの展開だった。2018年3月に東京・渋谷に72室の「HOTEL EMIT SHIBUYA(ホテルエミット渋谷)」を開業。海外観光客によるインバウンド需要を獲得し稼働率を高めている。今後は、同形態のホテルの観光地などへの出店を計画する。

 インバウンド需要を取り込む際に問題になるのが多言語対応。労働人口が減少している中、ホテルスタッフの獲得自体が難しくなる中で、多言語に対応できるスタッフを確保するのはより難しい。ホテルの場合は特に、多言語対応は宿泊客が在室する夜から朝までと勤務時間の面でも困難を伴うという。

 その解決策として、HOTEL EMIT SHIBUYAでは2018年10月から、AIスピーカーとチャットボットによる自動翻訳サービスを導入した。AIスピーカーとチャットボットを連動させて顧客にサービスを提供するのは、これが世界でも初めてとしている。

 想定する利用方法は、こうだ。宿泊客は基本、AIスピーカーに対し質問や希望を話しかける(写真1)。質問内容が、FAQ(良くある質問)のように回答が事前に蓄積できている場合は、AIスピーカーが返答する。AIスピーカーが対応できない内容の場合は、チャットボットを使ってホテルのスタッフとやり取りする。

写真1:宿泊客は客室内に設置されたAIスピーカーに話しかける

 チャットボットの利用に際しては、AIスピーカーの画面にチャットボット用のQRコードを表示し、宿泊者が所持しているモバイル端末からアクセスする。室内にはホテル情報などを提供する液晶テレビを設置しているが、現時点ではAIスピーカーなどの仕組みとは連携しておらず、今後、検討するとしている。室内家電との連携も検討課題に挙げる。

 AIスピーカーでの問い合わせ内容やチャットボットでのやり取りは、自動翻訳することで、ホテルスタッフが多言語に対応できるようにした。現時点で対応しているのは17の言語(英語、日本語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)、韓国語、タイ語、フランス語、インドネシア語、ベトナム語、スペイン語、イタリア語、マレー語、ミャンマー語、ドイツ語、ロシア語、メキシコ語、ポルトガル語)である。

 宿泊客は母国語を使って、質問や希望を伝えれば、ホテルのサービスのほか、周辺のレストランや観光スポット、ラジオ、交通案内といった情報を得られる。シダックスとしては、AIスピーカーでの対応力が高まれば高まるほど、フロントで電話を受ける必要がなくなるため、夜間も限られたスタッフでの運営が可能になると期待する。

 今後は、タクシーの配車サービスなどとの連携も計画する。HOTEL EMIT SHIBUYAのようなホテルにとって、タクシー配車は実は手間がかかる業務の1つという。大型ホテルのような車寄せがないこともあり、宿泊客の要望でタクシーを呼んでも、実際に宿泊客が乗車するまでに、宿泊客とタクシーのそれぞれと何度かのやり取りが必要になるためだ。

 AIスピーカーとチャットボットの仕組みは、HOTEL EMIT SHIBUYAを開発した不動産会社ボルテックスの企画の元、音声情報を扱うAIのクラウドサービスなどを手がけるTradFitが開発し、サービスとして提供している。

 ボルテックスは、「区分所有オフィス」というビルなどの資産価値を高める商品を開発・運用する不動産会社。HOTEL EMIT SHIBUYAでは、ボルテックスがホテルとして開発し、それをシダックスグループの事業子会社であるシダックス大新東ヒューマンサービスが一括受託運営している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名シダックス、シダックス大新東ヒューマンサービス
業種サービス
地域東京都渋谷区
課題インバウンド需要を取り込むホテル事業を拡大したいが、労働人口が減る中で、多言語対応できるホテルスタッフの確保が難しい
解決の仕組みAIスピーカーとチャットボットに多言語対応機能を加えることで、宿泊客への対応を自動化したり多言語対応したりを可能にする
推進母体/体制シダックス大新東ヒューマンサービス、ボルテックス、TradFit
活用しているデータ宿泊客が問い合わせで発した音声データ
採用している製品/サービス/技術AIスピーカーとチャットボットにおける多言語対応(TradFit製)
稼働時期2018年10月1日