• UseCase
  • 製造

大林組、迅速な災害復旧に向けて5G使う遠隔操作による建機の連携に成功

DIGITAL X 編集部
2018年12月27日

大林組は、迅速な災害復旧を安全に実施するために、5G回線を使って遠隔操作する2台の建設機械を連携させることに成功した。実験にはKDDIとNECが参加した。2018年12月14日に発表した。

 大林組が実験したのは、2台の建設機械(建機)を遠隔操作によって連携させる作業。災害時に起こる土砂崩れなどの2次災害を想定し、バックホーとクローラーダンプを遠隔操作で連携させて土砂を運搬した(図1)。大阪府茨木市で建設中の安威川ダムの施工エリアの一部で、2018年12月3日から2018年12月14日まで実施した。

図1:バックホーとクローラーダンプの遠隔操作の概要図

 遠隔操作するのは、作業現場の安全を確保するため。従来、Wi-Fiなどを活用した遠隔操作では、建機の操作に対し建機から送られてくる映像がずれ、オペレーターに疲労を強いていた。特に2台の建機を連携させる場合は、建機同士の距離感をつかめるよう、遠隔操作と映像のずれを最小化する必要があった。

 今回は、通信回線に高速・大容量・低遅延の5G(次世代移動通信システム)を使った。それぞれの建機には、前方に2Kカメラを3台、全天球カメラを1台搭載。2台合計で8台のカメラ映像と音声情報をリアルタイムに伝送することで、実際に搭乗しての操作と同等の操作性が実現できたとしている。

 さらに、1人のオペレーターが2台の建機を同時に操作できるよう、対話型の音声制御システムを導入し、音声のみでの建機の遠隔操作にも成功した。熟練者の不足を補い、作業効率の向上につながると期待する。

 災害現場で短時間に遠隔操作ができる環境を構築できるよう、車載型の5G基地局を使い、遠隔操作室も移動式のトレーラーハウス内に設置した。災害時に光回線が使用できないことを想定し、5G基地局と遠隔操作室の間(約750m)は10Gビット/秒の高速無線伝送システムで接続した。車載カメラの映像と遠隔操作室からの制御信号に加え、4台の俯瞰カメラの映像を伝送した。

 実験では、大林組が建機の遠隔操作システムを開発。KDDIは、5G総合実証試験の推進を担当した。NECは5G基地局と遠隔操作室を結ぶ高速無線伝送システム「iPASOLINK EX Advanced」を提供したほか、28GHz超多素子アンテナを用いた通信機器を開発した。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名大林組
業種製造
地域大阪府茨木市
課題Wi-Fiなどを用いた遠隔操作では、建機の操作に対して映像がずれ、オペレーターの疲労が増していた。特に2台の建機の連携が困難だった
解決の仕組み高速・低遅延の5G無線通信を活用し、遠隔操作と映像のずれを最小化。音声で建機を遠隔操作できる制御システムも導入し、1人で2台の建機を同時に操作できるようにした
推進母体/体制大林組、KDDI、NEC
活用しているデータ建機に搭載したカメラや俯瞰カメラの映像
採用している製品/サービス/技術音声操作を含めた建機の遠隔操作システム(大林組)、5G無線通信、2Kカメラ、全天球カメラ、10Gbpsの高速無線伝送システム「iPASOLINK EX Advanced」(NECが提供)
稼働時期2018年12月3日から2018年12月14日まで