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長崎県五島市、マグロ養殖に有害な赤潮の発生をドローンで早期に検知する仕組みを実証

DIGITAL X 編集部
2019年2月6日

長崎県五島市は、マグロの養殖に有害な赤潮の発生をドローンを使って早期に発見する仕組みの実証実験を実施し成功した。実験に参加したKDDIらが2019年1月22日に発表した。

 長崎県五島市は「マグロ養殖の基地化」を目指し、クロマグロの養殖に取り組んでいる。クロマグロは他の魚種に比べ赤潮に対する脆弱(ぜいじゃく)性が約10倍高く、死滅を防ぐためには赤潮の早期検知が求められていた。今回、ドローンを使って赤潮発生を早期に発見し、漁業者に通知する仕組みを実証実験した。

 実験したのは、(1)赤潮発生のおそれがある個所の特定から、(2)多地点・多深度の海水の採取、(3)有害プランクトンの判別、(4)漁業者への早期通知まで(図1)。このうち、(1)発生箇所の特定と(2)海水の取得にドローンを利用した。

図1:マグロ養殖に有害な赤潮を早期発見するためのシステム構成

 具体的には、広域を飛行するドローンにより、養殖地全体の海水の着色具合を調べ、赤潮発生のおそれがある個所を特定する。その個所から、多深度(1m、3m、5m)の海水をドローンで採取し、その画像を収集する(図2)。

写真1:海水採水の試験場(左)と海水を採取して画像を撮るドローン「AKABOT II」

 画像は、深層学習(Deep Learning)を用いて解析し、赤潮の原因となる有害プランクトンを識別して計数する(図3の左)。赤潮発生の危険性ありと判断すれば、クラウド経由で養殖事業者にリアルタイムに通知する。危険度を直感的に把握できる画面を用意した(図3の右)。

図3:有害プランクトンを識別・計数する画像解析(左)と赤潮のリアルタイム通知システムの画面

 従来の検知方法では、簡易的な計測しかできず精度が低かったうえ、海水の採水から赤潮発生の検知、漁業者への通知までに約12時間がかかっていた。今回実証した仕組みでは、それを約15分に短縮できた。

 実験には、長崎県五島市のほか、長崎大学、システムファイブ、KDDIが参加した。長崎大学は、プロジェクトの統括・管理やサービスの全体構成の設計・開発・調達を担当。システムファイブは、佐世保工業高等専門学校が開発した画像解析技術を基に解析ソフトを開発した。KDDIは、通信および情報を漁業者に提供するまでのシステム全般の構想設計などを担当した。

 本実験は、2018年度総務省IoTサービス創出支援事業の一環。今後も4者は漁業者の負担軽減や作業効率化に取り組み、2019年度以降にはAI(人工知能)を活用した「赤潮予報」の提供を目指す。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名長崎県五島市
業種農林水産
地域長崎県五島市
課題マグロ養殖に有害な赤潮の検知・通知に時間がかかり、被害が広がっていた
解決の仕組みドローンを使い、空中から赤潮発生のおそれがある個所を特定し、多地点・多深度の海水を採取。AI(人工知能)で画像を解析して有害プランクトンを判別し、漁業者へ早期に通知する
推進母体/体制長崎県五島市、長崎大学、システムファイブ、KDDI
活用しているデータドローンで撮影した上空からの写真や、多地点・多深度で採取した海水の画像、水温・溶存酸素、風向など
採用している製品/サービス/技術海水を採取できるドローン、海水の画像を解析する深層学習(Deep Learning)を搭載したクラウド基盤など