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前田建設、鉄筋コンクリート橋梁の劣化を測る光ファイバーセンサーをOKIと開発

DIGITAL X 編集部
2019年3月8日

前田建設は、鉄筋コンクリート橋梁の経年劣化を1種類の計測器だけで測定できる技術をOKI(沖電気工業)とともに開発した。光ファイバーをセンサーに用い、広い範囲の温度やひずみをリアルタイムに測定できる。実証実験を2019年上期に開始する予定だ。2019年2月12日に発表した。

 前田建設がOKI(沖電気工業)と開発したのは、鉄筋コンクリート橋梁の劣化状況を一元的に管理するためのモニタリング技術。光ファイバーをセンサーとして活用する技術に新しい「SDH-BOTDR方式」を採用することで、従来は数十分かかっていた測定を1秒以内に短縮した。広い範囲の温度やひずみをリアルタイムに測定できるとしている(図1)。

図1:光ファイバーセンサーの測定アルゴリズム

 内蔵する測定ソフトウェアで、現場における温度やひずみ変化を可視化するほか、センサーの測定範囲や測定結果に応じた設定を変更する。前田建設が持つノウハウを基に、監視システムを組み込んだインフラ運営フローを設計した。

 鉄筋コンクリート橋梁の監視では、ひび割れ発生箇所の検知に加え、剛性低下やクリープ(コンクリートに持続的に荷重が作用すると、時間とともに変形が増大する現象)による振動状態や、たわみ量などを把握しなければならない。しかし、経年劣化の過程で、着目すべき監視の指標が異なってくるため、従来は1つの監視技術では、すべての指標に対応できず、指標ごとに最適な技術を選定し適用する必要があった。

 今回の方式であれば、一般的にインフラの耐用年数とされる50年ほどの期間において、さまざまな種類の劣化に対する監視を1種類のセンサーだけで測定でき、トータルコストが削減できるという。

 2019年上期に供用路線の実橋に光ファイバーを設置し、実環境でのデータ取得を開始する予定である(図2)。効果が実証されれば、橋梁の劣化予測精度が高まり、最適なタイミングでの修繕工事が可能になるとする。

図2:実橋梁下への光ファイバーの取り付けイメージ

 両社は現在、前田建設が保有する実験施設において、接着材料の促進耐候性試験により長期的な接着性能を確認。光ファイバーを設置した鉄筋コンクリート試験体に対する疲労載荷試験により、鉄筋コンクリートの挙動に対する計測性能を検証している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名前田建設
業種製造
地域東京都千代田区
課題鉄筋コンクリート橋梁の監視では、経年劣化の過程において着目すべき指標が異なってくるため、指標ごとに適した監視技術を選定する必要があった
解決の仕組み光ファイバーをセンサーとして活用する技術の改良などにより、全寿命にわたる対応を1種類の計測器だけで可能にした
推進母体/体制前田建設、沖電気工業(OKI)
活用しているデータ光ファイバーをセンサーとして測定したデータなど
採用している製品/サービス/技術光ファイバーセンシング技術「SDH-BOTDR方式」(OKIが開発)
稼働時期2019年上期に実証実験を開始する予定