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木更津市、ジビエによる地域活性化を視野に鳥獣害対策を実証実験

DIGITAL X 編集部
2019年5月9日

千葉県木更津市が、イノシシなどの野生鳥獣による農作物などへの被害対策としてのIoT(Internet of Things:モノのインターネット)システムの実証実験に取り組んでいる。将来的にはジビエ(狩猟肉)産業による地域活性化も視野に入れる。持続可能な街づくりにICTを利用する取り組みの第1弾の位置付けだ。実験に参加するNTT東日本とともに2019年3月28日に発表した。

 千葉県木更津市が取り組んでいるのは、市内で被害が発生しているイノシシの捕獲をIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を使って効率を高めるための実証実験。2019年4月から2020年3月までの予定で、木更津市の矢那地域で実施する。

 実証するのは大きく4項目。(1)赤外線センサーによる檻の進入検知とアラート通知による巡回回数の削減、(2)ネットワークカメラによる檻の映像監視と、捕獲鳥獣の種類や大きさなどの生態把握による処理稼働(加工や処分)の効率化、(3)自動給餌による巡回稼働の削減や、給餌頻度の最適化による捕獲率の向上、(4)GIS(地理情報システム)を活用したイノシシの生態把握やヒートマップ活用による効率的な檻の設置である。

 並行して、ジビエ(狩猟肉)産業による地域活性化に向けた実証実験にも取り組む。民間の獣肉処理加工場と連携し、獣肉の処理と食用肉への加工から、流通、販売までの一連の工程を対象に、地域産業の創出や活性化を検討する(図1)。

図1:鳥獣害対策をベースに、ジビエによる地域産業の創出・活性化を目指す

 実験には木更津市のほか、NTT東日本、木更津工業高等専門学校、木更津矢那地区の農家、地元猟師(合同会社房総山業)、KURKKUが参加する。木更津市は鳥獣害対策の案を検討し、効果を測定。NTT東日本が実証実験全体を企画・運営する。木更津高専は鳥獣対策機器を企画・開発し、農家が実証実験の場を提供する。地元猟師は鳥獣捕獲後の処理を担い、KURKKUがジビエを加工・流通・販売する。

 今回の実験は、木更津市におけるICTを融合した持続可能な街づくりに向けた実証実験の第1弾になる。今後は、産官学が連携しながら具体的なテーマを定め、課題解決や産業発展につながる実証に取り組んでいく予定だ。

 テーマ設定する分野としては、第1弾の鳥獣害対策などの農林水産業関連のほかに、(1)観光振興などの商業・観光関連、(2)暮らしの安全・安心などの防災関連、(3)地域児童や高齢者見守りなどの福祉関連を候補に挙げている(図2)。

図2:持続可能な街づくりに向けて木更津市が取り組みを検討している領域の例

 これら実験では、ユースケースやニーズに基づき自営のネットワーク基盤を整備できるよう、ローカルセルラー(地域限定または特定地域における自営設備を利用した無線通信)や、IoT向けWi-Fiの仕様である「IEEE 802.11ah」の利用も予定している。

 木更津市は各種実証実験を通して得られた知見を、地域課題解決の先駆的なショーケースとして他地域にも発信し、持続可能な街づくりを支援していきたい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名千葉県木更津市
業種公共
地域千葉県木更津市
課題地域の課題解決や産業発展にICTを利用し、持続可能な街づくりを図り、得られた知見を他の地域にも発信したい。第1弾として、イノシシなどの野生鳥獣による農作物などへの被害に対策を講じ、ジビエ(狩猟肉)産業による地域活性化を目指す
解決の仕組み第1弾の鳥獣害対策では、赤外線センサーやネットワークカメラで鳥獣害を検知するほか、GIS(地理情報システム)などを活用してイノシシ捕獲を効率化する
推進母体/体制木更津市、NTT東日本、木更津工業高等専門学校、木更津矢那地区の農家、合同会社房総山業、KURKKU
活用しているデータ鳥獣害対策では、赤外線センサーによる檻の進入検知データ、ネットワークカメラによる檻の映像、GIS(地理情報システム)に基づくイノシシの生態データなど
採用している製品/サービス/技術鳥獣害対策では、赤外線センサー、ネットワークカメラ、自動給餌装置、GIS(地理情報システム)、ローカルセルラー、IoT向け無線LAN「IEEE 802.11ah」など
稼働時期鳥獣害対策の実証実験:2019年4月から2020年3月まで(予定)