• UseCase
  • 流通・小売り

工場用工具などを扱うトラスコ中山、新サービス「MROストッカー」投入や顧客への見積もり回答などの自動化へ

DIGITAL X 編集部
2019年5月13日

工場などで使用する機械工具や消耗品(MRO)の卸売を手掛けるトラスコ中山は新サービス「MROストッカー」の投入と、顧客対応業務の改善を図る。2020年1月をメドに、見積もり回答などを担う基幹システムを更改し、仕入れ先を対象にしたポータルサイトも構築する。2019年3月28日に発表した。

 トラスコ中山は、製造現場などで使う機械工具や工場用消耗品(MRO商材)を扱う卸売業者。紙のカタログでは40万店、オンラインショップでは140万店を扱い、国内に17の物流センターを展開している。

 新たに始める「MROストッカー」は、最終顧客の生産現場の隣接地に工具や消耗品を在庫し、必要なときに即納できるようにするサービス。トラスコ中山が扱う商品を販売店経由で取りそろえ、エンドユーザーがすぐに使えるようにする。

 そのために、注文から決済、在庫管理などが容易にできるように、ICタグやスマートフォンを使った仕組みを構築するほか、顧客データや天候データを分析し、それぞれの現場に最適な品ぞろえを可能にする計画だ。

 並行して、顧客への回答業務を改善するために基幹システムを更改する。そこでは、(1)見積もり回答の自動化、(2)適正商品価格の自動算出、(3)仕入れ先を対象にしたポータルサイト構築の3つの改革テーマに取り組む(図1)。

図1:販売店向けの見積もり回答を自動化するとともに、仕入れ先との連携を強化するためにポータルサイトを構築する

 見積もり回答の自動化では、1日数万件を人手で対応している見積もり業務をITで自動/半自動化し、社内の業務工数を削減。顧客への回答の迅速化とサービスレベルの向上を図る。

 適正商品価格の自動算出では、日々更新される商品の特性別や全国の販売店別に、日々手作業で更新している特価のマスター更新業務を、統計に基づきAI(人工知能)で自動的に算出する。工数を低減と更新漏れを防ぎつつ、顧客へ常に適正価格で提供できるようにする。

 仕入れ先を対象にしたポータルサイト構築は、仕入れ先との連携を強化するのが狙い。電話やFAXなどでやり取りしている見積もりや納期確認などを、基幹システムが持つデータをポータルに提供することで、効率的でタイムリーな情報連携を促進する。

 これらシステムの中核には、独SAP製のERP(統合基幹業務システム)である「SAP S/4HANA」とデータウェアハウス(DWH)の「SAP BW4/HANA」を採用する。

 そのうえで、機能拡張やAIなどを使う新機能や社外連携機能には、PaaS(Platform as a Service)として提供される「SAP Cloud Platform」上で開発。顧客情報を自動収集し分析する機能はIoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤の「SAP Leonardo」で構築する。

 システム構築には日本IBMと独SAP日本法人が協力する。日本IBMは、企画構想段階のコンサルティングから、要件定義、システム構築までを支援する。SAP S/4HANAの導入に関してはコンサルティングサービス「IBM Impact Assessment for SAP S/4HANA」を使い、SAP S/4HANAへ移行する際の影響を網羅的に評価したうえで、実データに基づくシステム構築プランを策定できたとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名トラスコ中山
業種流通・小売り
地域東京都港区(東京本社)
課題生産現場へ工具などを必要なときにすぐ届けたい。多数の商材を、取引先ごとに最適な価格・納期で提供したい。
解決の仕組み生産現場に隣接した場所に工具や消耗品の在庫を置く新サービスを開始する。基幹システムでは、見積もり回答や適正商品価格の算出を自動化するとともに、仕入れ先向けのポータルサイトを構築する。
推進母体/体制トラスコ中山、日本IBM、独SAP日本法人
活用しているデータ仕入れ、販売、見積もり、顧客などのデータ
採用している製品/サービス/技術ERP「SAP S/4HANA」、DWH「SAP BW4/HANA」、PaaS「SAP Cloud Platform」、IoT基盤「SAP Leonardo」(以上いずれも独SAP製)、導入コンサルティングサービス「IBM Impact Assessment for SAP S/4HANA」(日本IBMが提供)など
稼働時期2020年1月を予定