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大阪市水道局、水道の中長期の需要予測へのAI活用などを日立と共同研究

DIGITAL X 編集部
2019年5月16日

大阪市水道局は水道の中長期の需要予測にビッグデータ解析技術やAI(人工知能)を利用する研究に、日立製作所と共同で取り組んでいる。新たな需要要因の抽出や需要予測モデルを構築し、水道事業の経営改善策の立案に利用するのが目的。2019年4月1日に発表した。

 大阪市水道局が日立製作所と共同研究するのは、水道の中長期にわたる需要予測。水の需要は、産業構造やライフスタイルの変化により年々変わっている。今回、使用データなどから水の需要に関係する要因を抽出し、予測モデルを構築する。研究期間は2019年3月から2020年3月までである。

 共同研究では、大阪市水道局が水需要予測の取り組みで、これまでに得たノウハウや知見、保有するデータを提供。日立はビッグデータ解析技術やAI(人工知能)、OT(Operational Technology:制御・運用技術)などのノウハウを提供する(図1)。

図1:中長期の水需要予測を大阪市水道局と日立製作所で共同研究する

 日立は、水需要予測モデルを確立するとともに、予測に基づく水道事業の経営改善策を立案する。具体的には(1)高精度な中長期水需要予測モデルの構築、(2)水道事業におけるKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)と将来シナリオの検討、(3)ケーススタディを通じた水需要予測に基づく経営改善策の立案を予定する。

 水需要予測モデルの構築では、従来の変動要因にとどまらない新たな要因を含む中長期予測モデルを構築する。そのために、過去の水需要データを含む種々のデータをビッグデータ解析技術やAIで分析する。今後の経営判断に生かせるよう、水需要量の変化とその変動要因の因果関係を明確にする技術を採用するとしている。

 KPIと将来シナリオの検討では、水道事業経営上考慮すべきKPIとなる水道料金の回収率や水処理施設の稼働率などを定義する。併せて、KPIや水需要に影響を与え得る将来的な政策や人口動態などの社会動向を複数の将来シナリオとしてまとめる。

 経営改善策の立案では、(1)(2)の結果をもとに、将来のシナリオに基づく種々の水需要予測と経営分析をケーススタディし、KPI改善を図るための設備の統廃合や料金体系の変更といった施策の改善効果を分析する。これらを通じて、将来的な水道事業経営の改善に向けた施策を立案する。

 データの解析には、日立のIoTプラットフォームである「Lumada」を使う。KPIは、日立の顧客協創方法論「NEXPERIENCE」に基づくワークショップを通して定義する。NEXPERIENCEは、顧客やパートナーなど種々のステークホルダーが持つ知見を多角的に可視化し、協創を円滑にするための手法やITツール、空間を体系化したものだ。

 なお今回の共同研究は、大阪市水道局が公募した「水需要予測におけるビッグデータの活用技術に関する調査」に日立が応募して選定されたもの。2019年3月26日に実施協定を締結している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名大阪市水道局
業種公共
地域大阪市
課題水需要が産業構造やライフスタイルの変化により年々変わっており水道事業の経営計画が立てにくくなってきた
解決の仕組み水の需要を中長期に予測できるようにする。そのために新たな関係要因を抽出し需要予測モデルの精度を高める
推進母体/体制大阪市水道局、日立製作所
活用しているデータ過去の水需要データを含む種々のデータ
採用している製品/サービス/技術ビッグデータ解析技術やAI、IoT基盤のLumada、顧客協創方法論「NEXPERIENCE」など(いずれも日立製作所製)
稼働時期2019年3月から2020年3月まで(研究期間)