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ファナック、工作機械の停止防止やロボットによる良品判定に機械学習や深層学習を活用

DIGITAL X 編集部
2019年5月17日

工業用ロボット大手のファナックは2019年7月から、AI(人工知能)機能を搭載した工作機械やロボットの出荷を開始する。工作機械の異常の事前検知や、ロボットによる良否検査を可能にする。深層学習技術などを手掛けるPreferred Networks(PFN)と共同で開発した。2019年4月8日に発表した。

 ファナックが提供を始めるのは、(1)工作機械の突然停止を防ぐための「AI(人工知能)サーボモニタ機能」と、(2)ロボットによる良否検査の精度を高めた「AI良否判定機能」の2つ。

 AIサーボモニタ機能は、工作機械の送り軸や主軸の突然の故障による機械停止を防ぐためのもの。2019年7月から出荷を開始する予定である。

 同機能では、正常に動作している際のモーターのトルクデータを使って学習することで特徴量を抽出し、正常状態を表現する学習モデルを作成する。そこから実稼働中に得られるトルクデータを正常な状態と比較することで異常度を算出し、送り軸や主軸における異常の兆候を検知する(図1)。

図1:正常動作時のモーターのトルクデータを学習し、特徴量から異常度を算出する

 機械の操作担当者は、異常度を監視することで、加工現場で送り軸や主軸の異常の兆候を把握できる(図2)。故障する前にメンテナンスできるため機械の稼働率を高められる。

図2:機械の異常度を現場で監視できる

 一方のAI良否判定機能は、検査対象物のOK画像とNG画像を基に、ロボットが良否を判定する機能である(図3)。溶接したナットや、組み付けた部品の有無、部品の表裏の正しさなど、生産工程での確認作業を、外付けのPCなしに、ロボット制御装置の内蔵ビジョンで実行できる。2019年8月に出荷を開始する予定だ。

図3:検査対象物のOK画像とNG画像を基に、ロボットがAIで良否を判定する

 AI良否判定機能では、機械学習により画像から良否を判定するため、対象物の周辺状況やハレーション(白いぼやけ)の影響を受けにくい検査が可能になる。ビジョンパラメーターの細かいチューニングが不要で、OKとNGの画像をデータセットとして数枚から数十枚学習させれば高精度で判定できるようになるとしている。

 従来のビジョン機能で、たとえば部品の組み付け結果を確認する際には、あらかじめ指示した部品の形状と位置を検出し、「検出できれば対象物がある」「検出できなければ対象物がない」と見なす手法が取られていた。

 同手法では、対象物の周辺に煤などが残っていたり、金属反射によるハレーションなどがあったりすると対象物を見つけにくくなる。結果、対象物があってもNG判定になることが多く、ビジョンの設定に熟練を要していた。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名ファナック
業種製造
地域山梨県忍野村(本社)
課題工作機械の突然停止を防いだり、良否検査の精度を高めたい
解決の仕組みAIを使って正常状態と異常状態を判断する
推進母体/体制ファナック、Preferred Networks(PFN)
活用しているデータモーターのトルクデータ、検査対象物のOK画像とNG画像など
採用している製品/サービス/技術PFNが開発する機械学習・深層学習など
稼働時期2019年7月~8月に出荷を開始する予定