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横浜銀行、コンタクトセンターの通話録から顧客ニーズを探るためにAIで要約を作成

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年6月14日

横浜銀行は顧客への提案活動を強化するために、コンタクトセンターにおける通話力をAI(人工知能)を使ってテキストデータ化し、その要約を作成する仕組みを導入することを決めた。音声認識や要約作成のAIを開発・提供するエーアイスクエアが2019年6月5日に開いた記者説明会で発表した。

 横浜銀行が導入するのは、コンタクトセンターにおける顧客との対話内容をデータ化し、その要約を作成するための仕組み。これまで一部の声しか行内で利用できていなかったため、全対話を対象にAI(実行知能)で処理することで、顧客ニーズを探り出し、適切な商品提案などにつなげるのが狙い。

 要約作成には、AI(人工知能)エンジンの開発などを手がけるエーアイスクエアの「Quick Summary」。音声認識でテキスト化した対話内容から重要語句を抽出したり要約を作成したりができる。要約の長さは必要に応じて指定できる。

 Quick Summaryの導入に先立ち横浜銀行は実証実験を実施した。まず2018年9月に実施した音声認識の実証実験で認識率が十分なことを確認。そのうえで要約について確かめた。コンタクトセンターなどの対応録、約1000件を教師データにし学習させたところ、通話内容の抜粋では約8割の正解データを抽出、カテゴリ分けと、重要度を加味した要約でも約7割の正解率を得られたという。

 そこから、問い合せの主旨や傾向、これまで把握できていなかった顧客ニーズの把握によるサービス改善、および応対履歴の登録など通話後に発生する業務の効率化などが期待できると判断。加えて他のAIを使った仕組みより安価に運用できることから、Quick Summaryの本番導入を決めたとしている。

 横浜銀行は現在、コールセンターを含めたオムニチャネル環境の整備を進めている。そこでのコンタクトセンターは、「顧客満足度の向上」「業務の効率化」「収益機会の向上」の3つをテーマに見直しを図っている(図1)。2018年5月にシステムを更改。2019年度は、今回の要約システムなどを含め新規機能の追加を予定している。

図1:横浜銀行のコンタクトセンターにおける取り組み

 横浜銀行のコールセンターは150席規模で約200人が業務に就いている。応対している件数は月5万件に上る。今後は、利用率が高まるとみられるチャットボットなどにも要約システムの適用を考えていく。

 なおQuick Summaryの利用料は、初期費用が100万円(税別)、月額利用料は30万円程度から。学習期間などを含めて3カ月程度で稼働できるとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名横浜銀行
業種金融・保険
地域横浜市
課題コンタクトセンターで多くの顧客に対応しているが、音声による対話内容を顧客ニーズの把握や収益機会の創出に利用できていない
解決の仕組み応対内容を音声認識によりデータ化し、要約をAIで作成する
推進母体/体制横浜銀行、エーアイスクエア
活用しているデータコンタクトセンターで受けた顧客との応対音声データ
採用している製品/サービス/技術音声認識/要約作成のためのAI「Quick Summary」(エーアイスクエア製)
稼働時期2019年度中(2018年5月から実証実験を実施)