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出光興産、製油所での配管腐食の早期検知や腐食評価の精度向上にAIを活用

DIGITAL X 編集部
2019年6月27日

出光興産(トレードネーム:出光昭和シェル)が、製油所における配管の腐食について、早期検知や腐食度合いの精度向上などに向けて、AI(人工知能)を活用する実証実験を実施し、実運用する計画だ。AIに腐食度合いの別の画像を学習させたうえで、点検員が端末で撮影した配管画像を解析し腐食の進行度合いを評価できるようにした。2019年4月25日に発表した。

 出光興産が実施したのは、製油所における配管の腐食の早期検知や、腐食評価の精度向上などにAI(人工知能)を用いる実証実験。製油所の高経年化への対応や、ベテラン社員の引退による製油所保全のノウハウの継承といった課題に対処するのが目的だ。同社の北海道製油所で、2017年8月から2019年2月まで実施した。

 この実験により現場での有効性を確認できたとして、北海道製油所では、本システムを実際の点検業務に活用する予定である。

 実験で検証したのは、配管における腐食の進行度合いをAIで解析・評価する仕組みの実用性。具体的には、同社の腐食評価基準に従い、配管の画像や動画をピクセル単位で評価するモデルをディープラーニング(深層学習)技術を用いて構築。点検員が端末で撮影した配管の画像を解析し腐食の進行度合いを評価する(図1)。モバイル端末を使った配管画像の撮影とアップロード、解析結果の確認も検証した。

図1:点検員が端末で撮影した配管の画像を解析し、腐食の進行度合いを評価する

 解析モデルは、裸配管や保温材配管を対象に配管画像を学習して構築する。学習データとして、腐食ランクごとにラベリングした約5000枚の配管画像を利用した(図2)。

図2:腐食ランクごとにラベリングした配管画像を学習データとした

 実験では、出光興産が定義する基準で80%以上の高い解析精度を達成した。配管の腐食の早期検知に加え、点検員による腐食評価のバラつきを均一化でき、設備の信頼性向上へつながる可能性や、若手エンジニアの経験を補足する効果を確認した。

 今回の実証実験は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の2017年~2018年度事業である「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)を活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の一環である。

 実験には出光興産のほか、幹事会社となったアクセンチュアなどの関係機関が参加した。アクセンチュアは、配管の画像や動画を解析して腐食の度合いを評価するモデルを構築し、システム上で実装した。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名出光興産
業種製造
地域北海道(実証実験地)、東京都千代田区(本社)
課題製油所の配管に対し、腐食を早期に検知したり、腐食度合いを正しく評価できるノウハウを、ベテラン社員が引退してしまう前に継承したい
解決の仕組み点検員が端末で撮影した配管画像からディープラーニングにより腐食ランクを算出する
推進母体/体制出光興産、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、アクセンチュアなど
活用しているデータ学習データとなる、腐食ランクごとにラベリングした約5000枚の配管画像など
採用している製品/サービス/技術ディープラーニング技術など
稼働時期実証実験を2017年8月から2019年2月まで実施