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ブリヂストン、デジタル変革の推進に向けデータサイエンティストを4段階で社内育成
世界最大手のタイヤメーカー、ブリヂストンにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の目的は、製造業からソリューションプロバイダーへの転身だ。データドリブンな文化を根付かせるためにデータサイエンティストの社内育成に取り組んでいる。同社データソリューション開発部 岩 悠志 氏が、東京で2019年6月11日に開かれた「SAS FORUM JAPAN 2019」(主催:SAS Institute Japan)に登壇し、現在進行形の改革について語った。
米ニューヨーク5番街の1900年時と1913年時の2つの写真。そこには、わずか13年の間で大通りを走るのが馬車から自動車へと、がらりと変わっている。それを示したブリヂストン データソリューション開発部の岩 悠志 氏は、「これらと同じほど大きな変革期を迎えている」と切り出した(写真1)。
製造・販売業からソリューションプロバイダーに転身する
ブリヂストンの主要商品は、自動車やトラック、建設機器、航空機などに向けた各種のタイヤ。だが、大変革にあって同社は「これまでの製造・ 販売業からソリューションプロバイダーに転身を図る」(岩口氏)。同社のいうソリューションプロバイダーとは、「顧客の困りごとを、タイヤやその周辺技術を活用したソリューションで解決する」(同)ことである。
ソリューションプロバイダーへ転身するためにブリヂストンが取り組むのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。そのために同社は「シックスバブル」と呼ぶフレームワークに沿って変革に取り組んでいる。
シックスバブルは、ビジネスの全体像をとらえるためにコンサルティング会社のアクセンチュアが提唱したフレームワーク(図1)。(1)Strategy Intent(戦略的意図)、(2)Business Process(ビジネスプロセス)、(3)Behavior(振る舞い・行動)、(4)IT(情報技術)、(5)Organization(組織)、(6)Human Resources(人材)の6つの要素でビジネスをとらえる。その際、隣接する要素は互いに影響するが、隣接しないビジネスプロセスと人材、振る舞い・行動と情報技術は直接には結びつかないと考える。
ブリヂストンにとっての戦略的意図は、冒頭で説明した「製造販売業からソリューションプロバイダーへ」だ。DXはそのための手段であり、「センシング技術、解析予測技術、デジタルサービスの3つから顧客価値を提供。それらの知見を商品戦略に戻しカスタマイズを可能にし、サプライチェーンに乗せる」(岩口氏)ことを目指す。
データドリブンカルチャーで新たなバリューチェーンを創造する
この戦略を実現するための振る舞い・行動が「データドリブンカルチャーだ」と岩 氏は強調する。「デジタルトランスフォーメーションはビジネストランスフォーメーションそのもの。そしてビジネストランスフォーメーションには、顧客に提供するビジネスと、私たち自身の仕事をどう変えるかという2つの変革がある。それにはデータドリブンの考え方が不可欠だ」(同)と続ける。
なぜなら「(データに基づく)新しい知見と従来の知見を掛け合わせることが、迅速で効果的な意思決定やアクションにつながる」(岩口氏)と期待するからだ。
ブリヂストンにおけるデータドリブンのステップは、(1)何が起きたか(検知)、(2)なぜ起きたか(診断)、(3)何が起りうるか(予測)、(4)次はこうすべき(処方)の4つである。