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三菱電機リビング・デジタルメディア事業本部、家電の“サービス化”目指しグローバルIoT基盤をAWS上に構築

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2019年7月18日

家電や空調システムを扱う三菱電機のリビング・デジタルメディア事業本部は、モノ売りからサービス提供への切り替えに取り組んでいる。そのためにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤を従来のプライベートクラウドからAWS(Amazon Web Services)に切り替えた。同事業本部リビング・デジタルメディア技術部 IoTクラウド開発プロジェクトグループの三木 智子 氏と櫻井 翔一朗 氏が、2019年6月に開催された「AWS Summit Tokyo 2019」に登壇し、AWS移行の理由や気づきなどを解説した。

 「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の時代になり、家電・空調分野を取り巻く環境は大きく変わりつつある」--。2021年に100周年を迎える三菱電機のリビング・デジタルメディア技術部で、IoTクラウド開発プロジェクトグループのマネージャーを務める三木 智子 氏は現状をこう語る(写真1)。

写真1:三菱電機 リビング・デジタルメディア技術部 IoTクラウド開発プロジェクトグループのマネージャーを務める三木 智子 氏

 リビング・デジタルメディア技術部が扱う製品は、家電と空調システム全般。「ニクイねぇ!」をキャッチフレーズにする製品群だ(図1)。

図1:リビング・デジタルメディア技術部が扱う製品群(三木氏/櫻井氏のプレゼン資料より)

 そこでの環境変化はたとえば、技術面では、購買記録やスケジュールなど各種情報を組み合わせた個人適応とAI(人工知能)による自動化が進展。カスタマーエクスペリエンス(CX)においては、IoTにより顧客との接点が多様化され、AIによる顧客ニーズの先読み提案が実現している。

 市場は、メーカーが直接、顧客にカスタマイズを提案できるなどOne to One化が進み、モノの販売からコト(サービス)の提供へと変化し、ビジネスモデルも、ライフケアなど継続性が重要なサービスが、他事業や他社とのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)連携により拡大している。メーカーにすれば「広義の生活空間に直接的に付加価値を提供する製品・システム事業へ進化することが求められている」と三木氏は強調する。

データを介し現実世界と仮想世界の連携を図る

 そのために三菱電機は、データを介した現実世界と仮想世界の連携を図り「メーカーとしてモノの価値の提供をコトの価値の提供へと進める」(三木氏)ことを目指す。コトの提供例として、同社エアコン「霧ヶ峰」におけるスマートスピーカー対応や、HEMS(ホームエネルギー・マネジメントシステム)による電力の見える化を挙げる。

 現実世界と仮想世界を連携させるために三菱電機はこれまで、プライベートクラウド環境を整備しサービスを提供してきた。ただ「デバイスで取得したデータをネットワークで収集し、クラウドで分析して知識化するためには物足りなさを感じるようになってきた」と三木氏は打ち明ける。

 物足りなさを解消するために同社が選んだのが、パブリッククラウドサービス「AWS(Amazon Web Services)」への移行である。三木氏は「パブリッククラウドの導入事例が増えるなか、金融機関の事例が出てきたことに驚くと同時に『使える』と思った」と話す。

 パブリッククラウドに期待する効果は、(1)マネージドサービスを活用した開発スピードの高速化、(2)グローバル展開の容易性の確保、(3)Amazon Echoなどスマートスピーカー対応である。IoTクラウド開発プロジェクトグループの櫻井 翔一朗 氏は「システム環境を所有から利用へ舵を切るためにAWS導入を決めた」とする(写真2)。

写真2:AWS移行を担当した三菱電機リビング・デジタルメディア技術部IoTクラウド開発プロジェクトグループの櫻井 翔一朗 氏