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丸紅など、植林地の伐採計画の立案に準天頂衛星とドローンとトラクターで樹高を測定

DIGITAL X 編集部
2019年10月31日

丸紅と同社のインドネシア子会社が、植林管理に準天頂衛星を活用する実証実験に取り組んでいる。伐採計画を立案する際に必要な樹木の高さを、より正確に測るために、準天頂衛星やドローン/トラクターを活用する。実験に参加する日立ソリューションズ/日立製作所とともに2019年9月13日に発表した。

 丸紅はインドネシアの南スマトラ州に総事業面積約30万ヘクタールの植林地を持っており、現地子会社PT. Musi Hutan Persada(MHP)が所有・管理している。ユーカリなどの原木を製紙パルプ工場へ供給するのが目的だ。

 同地では、場所により降雨量や土壌環境が異なるため、樹木の成長をうながすには、植栽や除草をいつ実施するかが影響する。製紙パルプ工場への安定供給を維持するためMHP社は毎年、伐採計画を立案しているが、調査地点は営林システムで抽出した約1万カ所に上り、人の目でサンプル調査を実施し植林の成長量や収穫量を予測してきた。

 今回、伐採計画立案の効率化とオペレーションの最適化を目的に、準天頂衛星システム「みちびき」による高精度測位の効果を、2019年9月からの2カ月間で実証する。具体的には、ドローンで樹木の最も高い部分の標高を測定し、トラクターで地面の高さを測り、両者の差から植林地全域での樹高を推定する(図1)。

図1:ドローンで樹木先端の標高を、トラクターで地表の標高をそれぞれ測定し、両者の差から樹高を推定する

 実験は2期に分けて実施する。第1期は、樹木先端の標高の測定と伐採だ。光学カメラ搭載のドローンで樹林を空撮しながら、みちびきから位置と高さの信号(L6E)を取得する。空撮データとL6Eを地理情報システムで分析し、樹頂の標高である(DSM:Digital Surface Mode)を作成。その後、樹高のサンプルにするユーカリを伐採する。

 第2期では、地表の標高の測定だ。伐採後の裸地にトラクターを走らせ、走行軌跡と、みちびきからのL6Eを取得する。走行軌跡とL6Eから地表の標高である(DEM:Digital Elevation Model)を作成する。DSMとDEMの差から樹高を推定。実際に伐採したユーカリの樹高と推定値とを比較することで推定精度を検証する。

 なお実験では、インドネシアのような低緯度地域において電離層などが測位精度に与える影響も検証する。高緯度地域(オセアニア)での影響は検証済みであり、今回の実験で、みちびきの全軌道上での測位の安定性に貢献できるとしている。

 実験には丸紅とMHPのほか、日立ソリューションズと日立製作所が参加する。MHPは、ドローンやトラクターからのデータ取得などを担当。日立ソリューションズが、各種標高データの作成や、それに基づく樹高の推定などを担当し、日立が高精度測位技術などを提供する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名丸紅、インドネシアPT. Musi Hutan Persada(MHP)
業種農林水産
地域インドネシア・南スマトラ州(実証実験地)
課題広大な植林地で、伐採計画立案の効率化やオペレーションの最適化を図りたい
解決の仕組み樹高(樹木の背丈)の測定精度を高めるために、準天頂衛星システム「みちびき」による高精度測位技術と、ドローンとトラクターを用いる
推進母体/体制丸紅、インドネシアPT. Musi Hutan Persada(MHP)、日立ソリューションズ、日立製作所
活用しているデータ「みちびき」から受信した位置と高さの信号(L6E)、ドローンで撮影した伐採前の樹林の映像、伐採後の裸地を走ったトラクターの走行軌跡など
採用している製品/サービス/技術準天頂衛星システム「みちびき」による高精度測位技術、光学カメラを搭載したドローン、高精度測位信号を受信できるトラクター、地理情報システムなど
稼働時期2019年9月からの2カ月間(実証実験期間)