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東京・晴海の大規模再開発「HARUMI FLAG」、街全体の電力需要をAIで予測

DIGITAL X 編集部
2019年11月11日

東京・晴海の大規模再開発計画「HARUMI FLAG」は、街全体の電力需要をAI(人工知能)で予測するエネルギー管理システム(EMS:Energy Management System)を導入する。水素や太陽光など種々の電力源を利用し、需要のピークを抑制したり災害時に対応したりできるようにする。「HARUMI FLAG」の特定建築者11社と日立製作所が2019年10月10日に発表した。

 「HARUMI FLAG」は、2020年の東京オリンピックのための選手村を再開発して実現する東京中央区の大規模な市街地開発計画。住宅棟23棟5632戸と商業施設からなる。

 環境に配慮し、再生可能エネルギーを活用するのがHARUMI FLAGの特徴の1つで、純水素型燃料電池(PEFC)による電力供給も導入する。近隣に整備される水素ステーションからパイプラインを介して水素の供給を受ける。太陽光発電や蓄電池なども活用する。

 これらエネルギーのエネルギーを有効に利用するために、街全体のエネルギーを管理するためのシステム「HARUMI AI-AEMS」を導入する(図1)。各街区や各住戸、商業施設それぞれが持つエネルギー管理システムと連携し、街全体の需給情報を可視化したり、街区ごとの使用傾向を分析したりする。

図1:街区や住戸、商業施設など「HARUMI FLAG」全体のエネルギーを統一的に管理する

 電力需要をAI(人工知能)で予測する。気象情報や地域のイベント情報、過去のエネルギー使用実績や傾向などを加味し、それぞれの因果関係をAIが学習する(図2)。街の発展に合わせて学習が進むため、予測精度が向上するとしている。

図2:電力使用実績に気象情報などを加味し電力需要をAI(人工知能)で予測する

 電力需要のピークを抑制するために、エネルギー供給源の運転/運用計画の立案にも利用する。予測に基づきピーク時間帯を街区単位で判定し、太陽光発電と連動する蓄電池の充放電計画やPEFCの運転計画を立案する。同計画に合わせて、空調や照明など共用設備の運用も制御する。

 エネルギー使用量や予測値などは、HARUMI FLAGのポータルサイトやデジタルサイネージなどを介して、住民にも情報提供する。環境負荷低減への意識付けを促す。電力の需要予測によるエネルギー管理と併用し、電力ピークの発生自体を抑制できることを目指す。

 災害時のライフラインの確保にも利用する。蓄電池や非常用発電機、PEFCから共用部特定設備に電源を供給できるよう、蓄電池に一定の電力を残しておけるようにする(図3)。災害時の運転実績から電力の使用傾向を分析し、電力供給が持続可能時間を予測し災害時の運用を支援する。

図3:災害時の供給電源確保の概念

 HARUMI AI-AEMSで用いるAIには、日立製作所のIoT(Internet of Things:モノのインターネット)基盤が持つデータモデリング技術やディープラーニング技術を用いる。エネルギー運用・管理・制御基盤は、日立の統合エネルギー・設備マネジメントサービス「EMilia」をベースに構築する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名「HARUMI FLAG」(特定建築者11社:三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス、野村不動産、住友不動産、住友商事、東急不動産、東京建物、NTT都市開発、日鉄興和不動産、大和ハウス工業、三井不動産)
業種製造
地域東京都中央区晴海
課題大規模な再開発市街地において、水素や太陽光など再生可能エネルギーを活用し環境負荷を抑えながら災害にも強くする
解決の仕組み街全体のエネルギーを総合的に管理するための仕組みを構築し、AI(人工知能)を使って電力需要を予測する
推進母体/体制HARUMI FLAG、日立製作所
活用しているデータエネルギーの使用量や予測値、運用実績、気象情報や地域のイベント情報など
採用している製品/サービス/技術地域エネルギー管理システム「HARUMI AI-AEMS」(日立製作所が開発・提供)など