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ニチレイフーズ、生産と要員配置にAIを利用し立案時間を約10分の1に
冷凍食品などを手がけるニチレイフーズは国内4拠点の工場において、生産計画と要員配置計画をAI(人工知能)技術で自動立案するシステムを2020年1月から順次本格運用している。熟練者の経験に基づく“勘”をシステムに反映し、計画立案の作業時間を従来の10分の1程度に短縮できるという。システムを協働で開発した日立製作所とともに2020年2月4日に発表した。
ニチレイフーズが2020年1月から国内4拠点で本格運用しているのは、食品工場における「最適生産・要員計画自動立案システム」(図1)。AI(人工知能)技術を使って熟練者の経験に基づく“勘”を反映することで、需要変化に即応できる生産体制の構築と、業務効率や生産性の向上を図る。
加えて、熟練者以外の従業員が、生産計画と要員配置計画を作成できるため、労働時間の低減や休暇取得の向上など「働き方改革」の一助になると期待する。
システムの開発には2018年から取り組んできた。同年8月からの1年間は事業所で効果を検証してきた。結果、日別・ラインごとの生産商品や生産量などの生産計画と、作業者のシフトスケジュールなどの最適解を、従来の10分の1程度の時間で自動的に立案できた(図1)。最適解の候補は1工場で最大16兆通りの組み合わせがある。
新システムでは、熟練者が制約条件を考慮しながら立案している計画作業をAIで再現した。熟練者独自の計画パターンを数値化・重みづけし、それらを抽出・組み合わせて解析する。さらにシステムが導き出した生産・要員配置による結果や課題を学習することで、熟練者の効率性と品質を両立した生産・要員計画を立案できるようにした。
AIには、日立製作所の「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」を利用している。日立が鉄道のダイヤ編成など運行管理分野で利用してきた数理最適化技術と機械学習を組み合わせたAI技術「Hitachi AI Technology/MLCP(Machine Learning Constraint Programming)」を中核技術に持つ。
今回は制約条件として、生産計画の立案では設備の稼働状況や納期、コストを、人員配置計画の立案では作業員のスキルや勤怠などを設定。そのうえで過去の計画履歴を機械学習し、熟練者のパターンを見出し最適化エンジンとして組み込んだ。
食品メーカーは近年、需要変動に応じた商品の生産・供給が求められる一方、生産年齢人口の減少に伴う熟練者の不足などの課題を抱えている。そうしたなかでニチレイフーズは2004年から、品質管理や就業管理、セキュリティ強化など生産現場のシステム化に取り組んできた。
これまでは、業務を熟知しているニチレイフーズの従業員自らが業務を整理し、改善ポイントを見極めシステムに反映させる内製化により実効性の高いシステムを構築してきたという。
しかし生産計画や要員配置計画は、熟練者が長時間かけて立案していた。効果はあるものの、人手作業の継続や熟練者の経験則に基づく“勘”のシステム化は困難な状況にあった。結果、熟練作業者や一部の作業員の負担が大きく、その改善が課題になっていた。
ニチレイフーズは今後、本システムを国内11工場と海外工場へ順次展開していく。同時にデジタル技術を活用した生産性向上や生産リードタイムの短縮、在庫圧縮および働き方改革を推進する。
企業/組織名 | ニチレイフーズ |
業種 | 製造 |
地域 | 東京都中央区(本社)。国内工場11拠点、海外工場 |
課題 | 熟練者の“勘”に依存する生産計画や要員配置計画の立案を継続することが困難になってきた |
解決の仕組み | 熟練者の“勘”をAIで再現し、生産計画や要員配置計画の立案を誰でも短時間にできるようにする |
推進母体/体制 | ニチレイフーズ、日立製作所 |
活用しているデータ | 設備の稼働状況や納期、コスト、作業員のスキルや勤怠などの制約条件、大量の計画履歴を機械学習して見出した熟練者のパターンなど |
採用している製品/サービス/技術 | 「Hitachi AI Technology/計画最適化サービス」(日立製作所製) |
稼働時期 | 2020年1月から国内4拠点で本格運用を開始。順次国内11拠点および海外工場に展開する |