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ファミリーマートのDX戦略、「ファミペイ」のデータ基盤から広告と金融の新事業を生み出す

「DOORS -BrainPad DX Conference-」セッションより

DIGITAL X 編集部
2020年4月3日

ファミリーマートがデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)への取り組みを強化している。同社のDX戦略を牽引するデジタル戦略部長の植野 大輔 氏が東京で2020年2月19日に開かれた「DOORS -BrainPad DX Conference-」(主催:ブレインパッド)に登壇し、ファミリーマートのDX戦略と、その核になる「ファミペイ」の位置付けについて語った。(肩書は開催当時。本記事は2020年2月19日に開催されたイベントに基づいており現時点では内容が異なる場合があります)

 「あるコンサルティング会社の調査では『DXを実行している日本企業は6割、さらにDXを完了している日本企業が1割』だった。だが海外でDXの成功事例として日本企業は取り上げられていない。このギャップはどこから生まれてくるのか?」――。ファミリーマートのシニアオフィサーで経営企画本部デジタル戦略部長を務める植野 大輔 氏は、こう問いかける(写真1)。

写真1:ファミリーマート シニアオフィサー 経営企画本部 デジタル戦略部長 植野大輔氏

 その理由を同氏は「日本企業の多くが『DX』のDすなわち『デジタル』ばかりに注目してしまい、『DX』のXである『トランスフォーメーション』を重視していない。トランスフォーメーションで何をするかが理解できていないからだ」と分析する。

トップのDX戦略発表を受け全社の推進体制を構築

 植野氏が以前に勤めていた、あるコンサルティング企業では「トランスフォーメーション」を次のように定義されていたという。

 「効率化で改革の原資を作ること。それをもって未来のビジネスモデルに投資すること。そして、それらを推進できる新しいビジネスモデルの組織になっていること」

 これを踏まえて植野氏はDXをこう定義する。

 「正しいタイミングでデジタル技術を変革にぶつけていくこと」

 そのうえで植野氏は、「DXはノリや雰囲気で実行すべきではない。外科手術のように、サプリメントを飲んでも改善できない余命3年のビジネスをで救うのがDXだ。もちろんDXを実行しても失敗する可能性も高い。だが実行しなければ会社は生き延びられない。あえて実行するといった覚悟が必要だ」と強調する。

 ファミリーマートの経営トップがデジタル戦略を打ち出したのは2018年のこと。それは新聞でも大きく取り上げた。植野氏は「それがその後、会社に大きな良い効果をもたらした」と当時を振り返る。外部からDXの進捗を問われる機会が増え「否が応でもやらなければという雰囲気が社内に醸成された」(同)からだ。そこからデジタル戦略部も設立された。

 デジタル戦略部に着任した植野氏が真っ先に着手したのが、全社の推進体制や会議体制、検討体制を作ること。各部門から「その場でジャッジができる責任者に出席してもらい、スピード感のある判断ができるようにした」(植野氏)。外部のエキスパートも不可欠だった。だがコストを抑えるために、エキスパートは雇用せず時間単位の顧問契約にした。

 しかし植野氏は「コンビニは本部が動けば、それで店舗が変わるという業態ではない。本部が「これからはデジタルだ」と叫んでも、各店舗のスタッフやアルバイトまでが、それを信じなければDXはうまく起動しない」と語る。

 そこで同氏が取った行動が、ファミリーマートが何故デジタル化を進めなければならないのかを説いて回ること。北海道から沖縄まで各店舗のアルバイトを対象に合計132回、説明した。社内の動画ニュースもジャックし「DX推進に向けた全社的なお祭りムードを醸成するインナーマーケティングにも力を入れた」(植野氏)という。