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越ベトクレジット、個人ローンの契約や審査にタブレットやAIを使う実証実験を開始

DIGITAL X 編集部
2020年4月9日

ベトナムの金融機関ベトクレジットが、個人ローンの契約や審査のデジタル化に向けた実証実験を開始した。タブレット端末を使って手書きの書類作成を不要にするほか、AI(人工知能)を用いてローン審査の精度向上などを図る。実験に参加する日立製作所が2020年2月10日に発表した。

 ベトナムの消費者金融機関であるVietCredit Finance Company(ベトクレジット)が始めるのは、個人ローンの契約や審査にITを活用する実証実験。ローンの申し込み受付から契約締結までの期間短縮など、顧客の利便性向上につながる新たな金融サービスの実現に向け、課題を抽出し効果を検証する。

 実証するのは、(1)タブレット端末を活用した自動契約システム、(2)AI(人工知能)を用いたローン審査の2つ(図1)。

図1:VietCredit Finance Company(ベトクレジット)は個人ローンの申し込みから契約までのデジタル化を推進する

 自動契約システムでは、個人ローンの申し込み受付に汎用のタブレット端末を活用する。手書きによる煩雑な書類作成や、窓口での待ち時間を不要にする。事務員にとっても、手書き書類からデータを再入力したり、記載内容の不備を確認したりといった紙を主体にしていた窓口業務の負荷が軽減できる。

 申し込み時には、タブレット端末の通話機能を用いてオペレーターが手続きを支援できるようにする。顧客はオペレーターのガイダンスに従って入力・申請すればよい。オペレーターは、その場で申し込み内容を確認し入力ミスがあれば修正できる。不審な申し込みに対してはオペレーターが直接会話して確認する。

 顧客が入力したデータはバックオフィスのシステムに自動で登録する。事務のペーパーレス化により、事務員によるデータ入力ミスを防止し、データの再確認や追加・修正を不要にすることで、審査までの処理時間を短縮する。

 タブレット端末は渉外員の訪問契約時にも利用し、さらなるチャネル拡大と機会創出に期待する。実証ではベトクレジットの一部店舗に導入する。

 一方、バックエンドのローン審査では、スコアリングに、稀な事象の発生を予測できるAIを使う。データに基づく審査により、担当者の経験値への依存を減らし、審査でのばらつきの解消や精度向上、審査時間の短縮などを目指す。無理な貸し出しを防ぎ、貸し倒れ率の低減も図る。

 将来的には、自動契約とAI審査を組み合わせ、申し込み受付から本人確認、審査、契約までの一連の事務を電子化するサービスの実現を目指す。

 これまでベトナムの金融機関では、窓口やバックエンドでの事務作業は紙での運用が一般的で、書類の不備による手戻りや待ち時間の増大など、業務効率面の課題が多いとされてきた。個人ローンの取引量が増えたことから、消費者保護を目的に、無理な貸し出しを未然に防ぐ、より正確な与信審査が求められていた。

 実験にはベトクレジットのほか、日立製作所と、日立のベトナム現地法人であるHitachi Asia(Vietnam)が参加する。AIには、日本国内の住宅ローン審査で使われてきた日立の「Hitachi AI Technology/Prediction of Rare Case(AT/PRC)」を使う。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名ベトナムVietCredit Finance Company(ベトクレジット)
業種金融・保険
地域ベトナム・ホーチミン市(本社)
課題顧客の利便性向上につながる新たな金融サービスを実現したい
解決の仕組みタブレット端末を使って紙ベースだった事務作業の効率を高めたり、AIを用いてローン審査の精度を高める
推進母体/体制ベトクレジット、日立製作所、Hitachi Asia(Vietnam)
活用しているデータローン申し込み時に入力された顧客データなど
採用している製品/サービス/技術稀な事象の発生を予測できるAI「Hitachi AI Technology/Prediction of Rare Case(AT/PRC)」(日立製)など