• UseCase
  • 製造

大林組、道路造成工事における複数の建機を5Gでの遠隔操作に成功

DIGITAL X 編集部
2020年4月14日

大林組は先頃、道路の造成工事で掘削や運搬などに使う複数の建設機械を5G無線通信を使って遠隔操作し、施工結果もリアルタイムに確認する実証実験に成功した。実験にはKDDIとNECが参加した。2020年2月14日に発表した。

 大林組が実験したのは、道路造成工事における掘削や運搬、転圧(ローラーなどによる締め固め)など一連の作業を5G(次世代移動通信システム)無線通信を使っての遠隔操作と自動化。3台の建設機械(建機)を遠隔操作し、自動運転システムを搭載した振動ローラーと同時に連携させた。加えて、施工結果データもリアルタイムに伝送し解析した(図1)。

図1:実証実験では4台の建設機械と、施工結果を確認するための3Dレーザースキャナーを5G無線通信を使って遠隔施工管理室と結んだ

 実験は、三重県伊賀市で建設中の川上ダムの一部施工フィールドにおいて2020年2月3日から同14日にかけて実施した。大林組が建機の遠隔操作システムの開発・試験や、振動ローラーの自動運転システム、リアルタイム3Dレーザースキャナーの開発・試験を実施。KDDIが、5G総合実証試験の推進や5Gインフラの構築を担当し、NECが5G基地局と遠隔施工管理室を結ぶ高速無線伝送システム「iPASOLINK EX Advanced」を提供した。

 掘削・運搬・敷きならしでは、油圧ショベルとクローラーキャリア、ブルドーザーの3台の建機にそれぞれ、前方映像用の2Kカメラを3台、全方位カメラを1台設置。計12台のカメラ映像と遠隔操作の信号データをリアルタイムに伝送した。各建機には、5G端末と基地局を向き合わせるための「正対装置」を搭載した(写真1)。

写真1:遠隔操作で掘削した土を積み込む油圧ショベル(右)とクローラーキャリア。各建機の上部に載せられている白い機器が正対装置

 各建機の工事エリアを俯瞰する計8台の2Kカメラと、工事エリア全体を俯瞰する4K3Dカメラも活用し、土砂の掘削、運搬、敷きならしを実施した。

 転圧作業では、遠隔操作のブルドーザーが敷きならしをした後、自動運転の振動ローラーが土砂を転圧した(写真2)。振動ローラーと遠隔施工管理室の間では、施工指示データと振動ローラーの位置情報、転圧の結果と品質をリアルタイムに伝送した。

写真2:遠隔操作で敷きならしをするブルドーザー(右)と自動運転で転圧をする振動ローラー

 遠隔施工管理では、上述の計4台の建機(油圧ショベル、クローラーキャリア、ブルドーザー、振動ローラー)からの映像やデータ伝送と併せて、各建機に設置したGNSS(GPSに代表される衛星測位システム)から取得した建機の位置情報や、現場の施工状況と設計値との差異のデータを遠隔施工管理室に伝送した。

 建設機械の操作席では、各建機の遠隔操作を支援するために、施工部分の完成形などをモニター画面に表示する「マシンガイダンス」機能を用意。施工結果もリアルタイムに取得した(写真3)。

写真3:建機をリアルタイムに遠隔操作する様子

 さらに、土砂量や造成結果を遠隔から確認した。工事エリアに3Dレーザースキャナーを2台設置し、マシンガイダンス用データを取得したほか、施工現場の土砂量や造成結果のデータを伝送し、遠隔地からリアルタイムに出来形を確認した。

 建設業では、現場作業員の高齢化や若手就業者の減少に伴い、省人化による生産性の向上が求められている。測量や出来形の確認などは人手だと多くの時間と労力を要するため施工の効率化も求められている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名大林組
業種製造
地域三重県伊賀市(工事の現地)、東京都港区(本社)
課題建設現場を省人化するとともに施工時の測量や出来形の確認などの効率を高めたい
解決の仕組み建機の遠隔操作や自動運転、遠隔施工管理などを実現するために必要なデータを5G無線通信で伝送する
推進母体/体制大林組、KDDI、NEC
活用しているデータ建機に搭載したカメラや俯瞰カメラの映像、遠隔操作の信号データ、施工指示データ、建機に設置したGNSSから取得するデータ(建機の位置情報や、現場の施工状況と設計値との差異)、工事エリアに設置した3Dレーザースキャナーのデータ、施工現場の土砂量や造成結果のデータなど
採用している製品/サービス/技術建機の遠隔操作システムと振動ローラーの自動運転システム(大林組が開発)、5G無線通信(KDDIが構築)、2Kカメラや全方位カメラ、4K3Dカメラ、高速無線伝送システム「iPASOLINK EX Advanced」(NECが提供)
稼働時期2020年2月3日から同14日まで