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富山市、公共施設の利用状況をLPWAのセンサー網を使って可視化

DIGITAL X 編集部
2020年4月20日

富山市が、図書館など公共施設の利用状況を、各施設に設置したセンサーから得たデータを使って可視化する実証実験を2019年12月から2020年1月にかけて実施した。管理の最適化と利用者の快適さを高めるのが目的だ。実験に参加したTISが2020年3月16日に発表している。

 富山市は、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)プラットフォーム「富山市スマートシティ推進基盤」を構築済み。市内全域に無線通信ネットワークを展開し、図書館などの公共施設にセンサーを設置する。通信規格にはLPWA(Low Power Wide Area)の一規格である「LoRaWAN」を採用している。

 2019年12月〜2020年1月にかけて実施した実証実験では、富山市科学博物館と富山市立図書館を対象に、温湿度や照明といった環境データや施設の利用状況、人の流れなどのデータを富山市スマートシティ推進基盤に集約し、分析・可視化した(図1)。

図1:公共施設の温湿度や利用状況をセンサーで把握する

 並行して富山市スマートシティ推進基盤に、LPWAの別規格「ZETA」を組み合わせたハイブリッド型での運用を検証した(図1)。ZETAは、超狭帯域を使った多チャンネル通信やメッシュネットワークといった分散アクセスを特徴とする通信規格である。

図2:実験で使ったZETAのセンサー(左)とLoRaのセンサー

 科学博物館では、部屋や場所ごとの温湿度を折れ線グラフやヒートマップにして表示した。温度や湿度の調整が必要な部屋や場所が可視化できたとする。

 来館者にはビーコンを持って見学してもらい、興味をもった展示やイベント、案内アナウンスによる人の動きを可視化した(図3)。今後は、来館者の興味に合わせた展示物の充実や、より効果的なアナウンスの内容の検討などに利用したい考えだ。

図3:科学博物館でのセンサーの設置例

 図書館では、閲覧室の座席に設置したセンサーを使って利用状況をPCやスマートフォンに表示した。利用者の利便性が向上したという。特別展示室や書庫などでは温湿度を見える化し、書籍の保管位置や空調管理の適正化に役立てる。

 参考図書の棚ごとにもセンサーを設置し、どの棚がよく利用されているのかも測定した。参考図書は貸し出し対象でないことが多く、通常の貸し出し履歴からは利用状況が把握できない。センサーデータを分析することで棚ごとの利用状況がわかるようになった。

 今回の実証実験の目的は、スマートシティ推進基盤の開放を含めた多角的な活用の検討。2019年6月に民間企業や大学の研究機関に実証実験の提案を公募した。公共施設を対象にした実験は、TISが提案した「公共施設環境の見える化による快適な施設利用やエネルギー効率化」の内容。同実験にはZETAの総代理店であるテクサーも参画した。

 富山市はTISの提案のほかに22件を採択しており、スマートシティ推進基盤を活用して行政事務の効率化や新産業の創出を推し進めたい考えである。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名富山市
業種公共
地域富山市
課題公共施設の管理の最適化と利用者の快適性向上を図りたい
解決の仕組み施設に設置したセンサーをから施設の温湿度や利用状況に関するデータを収集・分析する
推進母体/体制富山市、TIS、テクサー
活用しているデータ施設の温湿度、施設の利用状況など
採用している製品/サービス/技術LoRaWAN、ZETA
稼働時期2019年12月10日~2020年1月31日