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徳島県海陽町やリブルら、IoTを使った牡蠣の養殖事業を開始

DIGITAL X 編集部
2020年5月1日

徳島県海部郡海陽町や牡蠣の養殖事業ベンチャーのリブルらが、那佐湾での牡蠣の養殖事業を2020年3月1日から始めている。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みを使い、養殖の安定化と効率化を図り、地域産業の発展を目指す。連携協定を結ぶKDDIが2020年3月30日に発表した。

 徳島県海部郡海陽町らが2020年3月1日に開始したのは「あまべ牡蠣スマート養殖事業」。同町と宍喰(ししくい)漁業協同組合、同町で牡蠣の養殖に取り組むベンチャー企業のリブル、徳島大学およびKDDIが2018年12月に結んだ地域活性化に向けた連携協定による取り組みである。漁獲量減少と後期者不足で低迷する水産業を養殖事業で活性化を図る。

 あまべ牡蠣スマート養殖事業では、一般的な牡蠣をつり下げて養殖する「イカダ垂下方式」ではなく、「シングルシード生産」とよぶ方式を採用する。海にポールを設置し、その間をつないだワイヤーにカゴを取り付け、そのカゴの中で牡蠣を1個ずつ養殖する(写真1の左)。養殖場である那佐湾の環境が澄んでおり牡蠣の養分になるプランクトンなどが少ないためとする。

写真1:あまべ牡蠣スマート養殖事業が採用する「シングルシード生産方式」(左)と導入するIoT機器

 シングルシード生産方式では、波によるカゴの揺れ具合が牡蠣の生育に影響するほか、生育期間や生育状況に合わせて牡蠣を入れるカゴの大きさや入れる個数を管理する必要があるという。これらは、これまで定期的に人がカゴの浮力を変えて揺れ具合を調整したり、牡蠣とカゴの関係を手作業で記録し事務所でデータベースに登録・管理したりしていた。

 今回の事業では、養殖カゴにIoTセンサーを取り付け、水温、濁度、およびカゴの揺れを把握し、クラウド経由でPCやスマートデバイスから確認できるようにする(写真1の右)。牡蠣とカゴの管理では、スマートデバイス用の「養殖管理ツール」を導入し、養殖場で作業日誌を更新できるようにする。

 これらのデータは、漁業者間で共有したり振り返ったりができるため、作業効率を高めるだけでなく、環境と牡蠣の育成に関する各種ノウハウの蓄積による生産性の向上を目指す(図1)。

図1:あまべ牡蠣スマート養殖事業におけるセンサーデータなどの流れ

 本事業における各団体の役割や表1の通り。

表1:あまべ牡蠣スマート養殖事業における参加者と役割
参加者役割
海陽町町内関係者との調整、広報やPR活動
宍喰漁協データ収集におけるフィールドの提供
リブル養殖環境でのICT活用、環境データ収集
徳島大学揺れセンサーの開発、収集データの分析
KDDIIoTセンサー、クラウドサーバー、養殖管理ツールの提供

 なお本事業は、福井県小浜市での「『鯖、復活』養殖効率化プロジェクト」の横展開事業として総務省の令和元年度「IoT実装推進事業」に採択されたもの。リブルが受託し、海陽町、宍喰漁協、徳島大学、KDDIが連携する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名徳島県海部郡海陽町
業種農林水産
地域徳島県海部郡海陽町
課題水産業が漁獲量減少と後期者不足で低迷している
解決の仕組みIoTの仕組みなどを使うことで牡蠣の育成に必要な養分が少ない海域での牡蠣の養殖事業を可能にし、収益を得るとともに養殖ノウハウを蓄積する
推進母体/体制徳島県海部郡海陽町、宍喰漁協、リブル、徳島大学、KDDI
活用しているデータ海水温、濁度、カゴ揺れのセンサーデータ、養殖カゴに入っている牡蠣の養殖期間や大きさ、個数など
採用している製品/サービス/技術揺れセンサー(徳島大が開発)、養殖管理ツール(KDDIが開発)など
稼働時期2020年3月1日から開始