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三菱地所、ビルの廃棄物の収集ルートをAI/量子コンピューターで最適化しCO2の57%削減を確認

DIGITAL X 編集部
2020年5月7日

三菱地所は東京・丸の内エリアにおいて、ビルから出る廃棄物の収集・運搬ルートの最適化を図るために、AI(人工知能)と量子コンピューターを活用する検証を2019年9月から実施してきた。その結果として、CO2排出量を削減できる可能性を確認できたことから、PoV(Proof of Value:導入前検証)に取り組んでいる。検証にはグルーヴノーツが参加した。2020年3月30日に発表している。

 三菱地所が実施したのは、「廃棄物収集ルート最適化」に向けた検証。東京・丸の内エリアに三菱地所が所有・運営管理する26棟のビルを対象に、それぞれから発生する廃棄物の収集・運搬ルートを、AI(人工知能)と量子コンピューターを活用すれば、どれだけ最適化を図れるかを確かめた。

 結果としては、ゴミの発生量を94%の精度で予測でき、その予測に基づき廃棄物を収集・運搬する最適なルートを瞬時に求められたとしている。丸の内エリアにおける廃棄物の収集・運搬作業の効率化と、車両の移動距離を最小にすることで、CO2の排出量を約57%、車両台数は約59%の削減が可能になるという(表1)。

表1:「廃棄物収集ルート最適化」の検証結果
項目現状最適化結果現状との差異削減率
総走行距離2296.2km1004.2km▲1292.0km56.2%
収集車台数75台31台▲44台58.7%
総作業時間8650.9分5372.2分▲3278.7分38.0%

 今回の検証は、(1)可視化、(2)予測、(3)最適化の3つのステップを踏んで実施した(図1)。

図1:「廃棄物収集ルート最適化」に向けた検証の3ステップ

 可視化ステップでは、検証に必要なデータを収集した。収集したデータは、ビルごとの入居企業や在勤者の数、飲食や物販などのテナントのタイプと割合、可燃ゴミ・不燃ゴミやビン・缶など14種類の廃棄物の過去3年間の発生量、廃棄物処理業者の廃棄物の収集頻度、収集ルート、作業時間などである。

 予測ステップでは、可視化ステップで収集したデータに、気温や湿度、降水量などのデータや地区のイベント情報などを組み合わせて、ビルおよび廃棄物の種類別のゴミの発生量を予測するAIモデルを構築・評価し、ゴミの発生量を予測・シミュレーションした。

 同予測には、グルーヴノーツが開発したクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」を利用した。MAGELLAN BLOCKSは、AIと量子コンピューターを搭載し、上記の気温や湿度、降水量などのデータも提供する。

 最適化ステップで、AIが予測したゴミ発生量に基づき、量子コンピューターで車両台数が最少かつ移動距離が最短になるルートの組み合わせをシミュレーションした。廃棄物運搬車両の積載可能量や、ビル・廃棄物処分場の搬出入の形態や位置、収集作業時間を考慮した(図2)。

図2:収集・配送ルートの最適化の際に考慮すべき点

 三菱地所とグルーヴノーツは、2019年9月に設立した「丸の内データコンソーシアム」においてデータを活用して街に対する新たな価値や事業の創出を目指した取り組みを進めている。廃棄物の収集ルートの最適化検証もその一環だ。両社は現在、検証から得られたデータを基に、具体的な運用へ向けたPoV(Proof of Value:導入前検証)に取り組んでいる。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三菱地所
業種サービス
地域東京・千代田区(丸の内エリア)
課題街に対する新たな価値や事業を創出したい。そのための課題の1つに、ビルから発生する廃棄物の収集・運搬がCO2の発生源になっていることがある。
解決の仕組みゴミの発生量を予測し、最適な廃棄物収集・運搬ルートのAIと量子コンピューターを活用して導き出す
推進母体/体制三菱地所、グルーヴノーツ
活用しているデータ(1)ビルに関するデータ=ビル26棟の入居企業および在勤者の数、ビルに入居しているテナントタイプとその割合など、(2)廃棄物に関するデータ=可燃ゴミ・不燃ゴミ、ビンや缶など14種類のビルごとの過去3年間の発生量など、(3)廃棄物の収集・運搬に関するデータ=廃棄物処理業者が保有する運搬車両の仕様や廃棄物の収集頻度、収集量、収集ルート、収集にかかる作業時間など
採用している製品/サービス/技術AIと量子コンピューターの機能や、気温や湿度、降水量などのデータも提供するクラウド「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」(グルーヴノーツ製)
稼働時期2019年9月