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カゴメ、加工用トマトの営農をビッグデータ活用で支援するサービスを事業化
カゴメはスマートアグリ事業部を新設し、加工用トマトの営農をビッグデータ分析などで支援するサービス事業に乗り出す。まずは欧州で2020年4月にサービスを開始した。ビッグデータ活用などの仕組みはNECと共同開発している。2020年3月31日に発表した。
カゴメが提供するのは、加工用トマトの営農をビッグデータ活用で支援するサービス。トマト一次加工品メーカーと、トマト農家、およびトマト農家を支援する営農指導者の3者が育成状況などのデータを共有できるようにすることで、収穫量の安定化や栽培コスト低減による収益性の向上などを図る(図1)。
サービス提供に当たりスマートアグリ事業部を新設。まずは欧州のトマト一次加工メーカーらを対象に2020年4月からサービスを提供している。事業化においては、支援策に使用するビッグデータ活用システムを共同開発したNECと、戦略的パートナーシップ契約を締結した。
加工用トマトの生産は、生産者の減少や環境負荷の低減などの課題を抱えている。そこでカゴメのスマートアグリ事業では、(1)ほ場の可視化、(2)営農アドバイスの2つのサービスを提供する。
ほ場の可視化では、センサーや衛星写真からトマトの生育状況や土壌の状態などを示すデータを取得し、スマートフォンなどから確認できるようにする(図2)。
これにより、一次加工メーカーは、データに基づき収穫を調整することで生産性向上が図れ、農家は異常に早期に気づけ栽培リスクを低減できる。営農指導者は、広いほ場でも、異常箇所を特定しデータに基づく指導が可能になるとする。
営農アドバイスでは、データをAI(人口知能)などで分析し、熟練栽培者のノウハウを形式知に変え水や肥料の最適な量と投入時期を示す。営農指導者には専用の農場管理・情報集約ポータルを用意し、形式知化された営農支援ノウハウを容易に利用できるようにする(図2)。
これにより、一次加工品メーカーは安定的な調達と調達コストの低減を期待でき、農家は熟練者のノウハウに基づく営農で収益性を高められるほか、技術継承が容易になり新規就農者の増加を期待できる。営農指導者も形式知の利用により農家の指導や営農指導者の育成にかかる時間を短縮できるとしている。
サービス提供の基盤となるデータの収集・分析環境にはNECが提供する「CropScope(クロップスコープ)」を使う。そこでの営農支援技術をカゴメはNECと共同で2015年から開発を始め、ポルトガルやオーストラリア、アメリカなどで実証実験に取り組んできた。
実証の結果としては、ポルトガルで2019年に実施したAI営農実証試験では、窒素肥料を一般平均量より20%少ない投入量のポルトガルの全農家の平均収穫量の1.3倍のトマトを収穫できた。これは熟練栽培者と同等の結果だという。
カゴメは今後、日本国内でのスマートアグリ事業の展開を視野に、2020年には国内で複数のトマト産地で事業展開に向けた検証を実施する計画である。
企業/組織名 | カゴメ |
業種 | 製造 |
地域 | 愛知県名古屋市(本社) |
課題 | 加工用トマトを量的・質的に安定した形で調達したい |
解決の仕組み | トマト一次加工メーカーとトマト農家、トマト農家を指導する営農指導者のそれぞれに共通データに基づく営農環境を提供することで、トマト一次加工品メーカーやトマト農家の生産性向上や栽培リスクの低減を支援する |
推進母体/体制 | カゴメ、NEC |
活用しているデータ | 水分など土壌の状況、衛星写真によるトマトの生育状況などのデータ |
採用している製品/サービス/技術 | IoT基盤「CropScope(クロップスコープ)」(NEC製) |
稼働時期 | 2020年4月(欧州において) |