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TOYO TIRE、ゴム材料の特性予測や構造の最適化にAI使う開発基盤を開発

DIGITAL X 編集部
2020年5月21日

TOYO TIREは、ゴム材料の開発において特性予測や構造の最適化が可能な開発基盤を開発した。AI(人工知能)を使ったマテリアルズ・インフォマティクス(MI)技術を採用することで、開発期間の短縮と高付加価値化を図る。MI技術は米SAS Instituteとの協業で開発した。2020年4月22日に発表した。

 TOYO TIREが開発したのは、ゴム材料の特性を予測したり材料の構造を最適化したりするための技術。同社独自のゴム材料開発基盤技術である「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」一環として、AI(人工知能)などを使って材料探索などの効率を高めるマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を使って実現した(図1)。

図1:ゴムの材料構造に対する推測モデルの適用イメージ

 ゴム材料は、ポリマーに補強剤や各種薬剤を添加した複合材料である。新材料開発では、薬剤の種類や量、加工法などを調整し求める材料を作り出す。これまでは、研究者が経験値と実験シミュレーションを繰り返すことで、新素材を開発してきたため、材料開発に相当な時間がかかってきた。

 MI技術を導入した新しい開発技術では、補強剤や薬剤の特性や配合の推測値を算出することで、テスト回数を最小限に抑えられるという。システムには非線形推定モデルを実装。自社の材料データベースだけでなく、外部の情報を取り込むことで、自社の知見を超えた配合などを予測し、より高性能な材料を効率的に開発できると期待する。

 新しい開発技術は、新材料の開発にも利用する。同技術を使えば、材料の構造情報から、その特性の推測値を算出できるだけでなく、その逆に「目標とする特性値から構造を最適化する」という逆問題にも応用できるためだ。

 従来は、さまざまツールを使って材料特性の要素を階層別に構造分析あるいは評価してきたが、取得できる材料構造や化学構造のデータの次元が異なるため、特性を間接的に推測するための情報としての利用にとどまっていた。

 新技術に採用したMIとしては、米SAS Instituteが提供するデータマイニングおよび機械学習機能の「SAS Visual Data Mining and Learning」と「SAS Optimization」を採用した。補強材や薬剤の配合においては、ビッグデータ解析技術を、新材料開発にはディープラーニング技術を、それぞれに主に利用している。

 TOYO TIREのMIへの取り組みは、2018年から既存データをベースに対しMIを適用し配合と物性の予測技術の検証を本格化し、2019年には外部情報を含めたMIの適用を検証した。

 今後は、自社データを最大限に活用できる環境を整備するとともに、MIによる解析方法や予測データを使った新材料・新素材を開発することで、「高性能な製品開発と開発時間の短縮・コスト低減の両立を図りたい考えだ。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名TOYO TIRE
業種製造
地域兵庫県伊丹市(本社)
課題新材料/新素材を短期間・低コストで開発したい
解決の仕組みAIなどにより材料探索などの効率を高めるマテリアルズ・インフォマティクス(MI)を導入するとともに、社外データも活用できるようにする
推進母体/体制TOYO TIRE、SAS Institute Japan
活用しているデータゴム材料の化合物構造情報や材料特性など
採用している製品/サービス/技術「SAS Visual Data Mining and Machine Learning」「SAS Optimization」(いずれも米SAS Institute製)
稼働時期2020年