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医療情報の広域連携が進む愛知県、コロナ禍の医療現場での地域連携を可能に

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年5月25日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に立ち向かう医療機関の奮闘が続いている。感染拡大の防止と患者の治療はもとより、コロナ以外のさまざま病気やけがの治療などにも並行して取り組まなければならない。そんな活動を愛知県内に広がる広域情報共有プラットフォームが役立っている。同種のプラットフォームに連携するシステム数は愛知県が飛び抜けている。なぜ愛知には同プラットフォームが広がっているだろうか。

 愛知県の35行政が、在宅での医療や介護福祉サービスを提供するために情報共有基盤を使った情報共有を目的とした広域連携協定書を2020年4月日に締結した。基盤にはIIJが2017年4月に商用化した「IIJ電子@連絡帳サービス」を利用する。2020年10月には、さらに11行政が参加し、県内で電子@連絡帳を利用する全46行政が広域連携協定を締結する予定だ。

 愛知県内での電子@連絡帳の利用数は、これまで順調に伸びてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大後は顕著な動きを見せている。2020年4月の記事投稿数は過去の平均に対して1.4倍に増加した(図1)。

図1:愛知県内の「IIJ電子@連絡帳サービス」の投稿記事数

 これについて愛知県医師会理事の野田 正治 氏は、「従来、対面で実施してきた医師からスタッフへの連絡や、訪問看護師からの報告や相談がオンライン化したため。新型コロナウイルスという難局に、情報基盤の有用性が改めて確認された」と語る(写真1)。

写真1:愛知県医師会理事の野田 正治 氏(オンラインビデオ会議で参加)

 同基盤上では、医療に関わる会議をオンラインで開催する取り組みも出てきた。「非常事態の中で、ある自治体では医師が手一杯で会議に参加できなくなり、要介護認定を審査する議題が扱えなくなった。その患者の情報を情報基盤経由で他の自治体が引き取ることで判定できた」(野田氏)という。広域での情報共有基盤を介して他地域の業務を補う運用が始まっている。

行政区をまたがる二次医療圏での連携を支える

 今回の広域連携協定の本来の目的は、県内の市町村が二次医療圏間で医療・介護情報を連携することである。

 二次医療圏と何か。通常、住民が病気になったり検査を受けたりする際の病院は、居住する市区町村内か近隣の自治体になる。このとき、住居のある市区町村が一次医療圏、一次医療圏を複数束ねたエリアが二次医療圏である。

 だが住んでいる場所が二次医療圏の境界付近の場合、生活圏と二次医療圏が食い違う場合がある。住民の生活圏と各医療圏の医療機関の配置などを考えれば、二次医療圏の間でも医療情報の連携が必要なケースが出てきている。

 たとえば、小児疾患など高度な治療が必要な患者に対応できる医療体制を備える高度急性期病院は数が少なく、他の二次医療圏にある病院で治療しなければならないケースが多い。広域連携協定があれば、他の二次医療圏に移送した患者の情報が迅速に把握できる。

 愛知県には54の市町村があり、12の二次医療圏に分かれている。広域医療連携は、今回の新型コロナ対策のように、通常より広域の医療機関や介護機関の連携が必要な時にも有効に機能する。

図2:愛知県における「IIJ電子@連絡帳」の利用状況