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ホンダ、「ビジネス」と「ファン」に二極化するバイク市場に“つながるバイク”で挑む
「Mobility Transformation 2020 Online」より
人と機械が連携し行動の拡張や進化が実現
ビジネスバイクの市場では、徹底した合理性が求められている。自転車では運べない荷物の配達や、山坂を1日中走れる道具として機能する必要がある。そのうえで車と比べれば、ランニングコストが安く、駐車スペースをとらず、渋滞にも巻き込まれない乗り物という位置づけになる。
このニーズに応えるためにホンダは、低コストで信頼性が高く、安全に運用できるバイクを提供してきたが「フリートマネジメントは、デジタルによって、その合理性をさらに高めるために必要なツール」(山本氏)になる。
そのツールの開発過程で山本氏が感じたことは、「ハードウェアとソフトウェアの開発手法の違いだ」という。「ハードウェア(ものづくり)は、試作を繰り返し少しずつ精度を高めながら全体を完成させていくプロセスだ。ソフトウェアは逆に、全体が動く仕組みを先に作ってから、それを修正していく。このことは我々にとってスマートドライブと協業して一番の驚きであり、発見だった」(同)
一方、開発を支援したスマートドライブ取締役の元垣内(もとがいと)広毅 氏は、「ホンダ・フリートマネジメントでは、データの活用により、従業員自身がバッテリー燃費を向上させる走り方を学び、行動変容していけば、結果的にバッテリーの心配をする必要がない電動バイクの運用が可能になる」と話す。
「移動データの活用は、過去データの分析から、自動化、AI(人工知能)による予測分析へと進む。最終的には、人と機械の連携による行動の拡張や進化が実現できるだろう。移動データと業務データや人のデータを組み合わせれば、可能性は無限に広がる」(元垣内)からだ(図4)。
ファンバイクは移動の行程自体が“アトラクション”
さて、バイク市場のもう1つ市場である「ファンバイク」に向けては、どんな手を打つのか。
ファンバイクは個人の“趣味の世界”に向けた製品である。ライダーにとっては自己実現の道具であり、目的地に早く安全に着くだけでなく、そこに向かう行程そのものが目的であり、楽しみだ。
この市場に向けてホンダは、「便利さや合理性でなく、バイクに乗ること自体を1つの“アトラクション”として、その魅力をさらに高めるためのサービスを提供することを考えている」と山本氏は語る。
具体的には2つのサービスに取り組んでいる。1つは「HondaGO」(図5)。免許を持っているがバイクを持っていない人に向けたレンタルサービスである。新型車の試乗やツーリングなど、バイクを手軽に利用できるようにする。
もう1つは、バイクの所有者とメーカーをつなぐスマートフォン用アプリケーションだ。現時点では構想段階だが、「コミュニケーション機能を充実させたアプリを開発中だ」と明かす。「たとえば、旅行中にレンタルバイクを使った楽しい体験を提供する。道々のプランはスマホアプリがサポートするような世界を実現したい」(山本氏)という。
ビジネスバイクが求める超合理性と、ファンバイクが求める超感性。その両極端に振り切った戦略で挑むホンダのコネクテッドバイクは、それぞれの市場を開拓できるのか。実際のサービス提供が待たれる。
企業/組織名 | ホンダモーターサイクルジャパン |
業種 | 製造 |
地域 | 東京都北区(本社) |
課題 | 縮小する二輪市場が「ビジネスバイク」と「ファンバイク」に二極化するなかで、それぞれの底堅い需要を確実につかみたい |
解決の仕組み | 電動バイクの投入など車両のデジタル化に加え、ネットワーク経由で各種データを取得し新たな付加価値サービスを提供する |
推進母体/体制 | ホンダモーターサイクルジャパン、スマートドライブ |
活用しているデータ | バイクの走行データ、スマホアプリの利用データなど |
採用している製品/サービス/技術 | 車両管理サービス「ホンダ・フリートマネジメント」、バイクレンタルサービス用アプリケーション「HondaGO」(いずれもホンダがスマートドライブと開発) |
稼働時期 | 2020年夏(ホンダ・フリートマネジメントのサービス開始時期) |