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ホンダ、「ビジネス」と「ファン」に二極化するバイク市場に“つながるバイク”で挑む

「Mobility Transformation 2020 Online」より

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年6月1日
写真1:「Mobility Transformation 2020 Online」(主催:スマートドライブ)に登壇したホンダモーターサイクルジャパン 経営企画室の山本 祐司 氏(左)と、スマートドライブ取締役の元垣内(もとがいと)広毅 氏

二輪の販売台数で世界1位のホンダが、業務用と趣味のバイクの両面で、ネットワークにつながる“コネクテッドバイク”に関するサービス開発に取り組んでいる。ホンダモーターサイクルジャパン 経営企画室の山本 祐司 氏が2020年4月28日、オンラインセミナー「Mobility Transformation 2020 Online」(主催:スマートドライブ)に登壇し、ホンダの二輪戦略を紹介した。

 日本国内のバイクの年間販売台数は、ピークだった1982年の328万台が2018年は36万台と10分の1近くに激減している。良く売れていた時代も、生活の足として原付一種の50ccバイクが最も多く、その後の都市交通の進化によってニーズが減ったことが台数減の主な要因だという説もある。

二極化するバイク市場の双方を伸ばしたい

 現在のバイク市場は、「ビジネスバイク」と「ファンバイク」に二極化しているという。前者は、配達や営業、保守作業など業務用の小回りが効く移動手段が主な用途。後者は、趣味のツーリングやキャンプなどの用途で使う大型バイクなどだ。

 ホンダモーターサイクルジャパン 経営企画室の山本 祐司 氏は、「これら2つの市場は底堅い需要があるとみており、どちらも伸ばしていきたい」という(図1)。

図1:バイク市場は、「ビジネスバイク」と「ファンバイク」に二極化(山本氏のプレゼン資料より)

 そのための新しい付加価値として注目しているのが「コネクテッドバイク」だ。ビジネスバイクとファンバイクのそれぞれに“つながるバイク”のサービスを提供しようとしている。ただコネクテッド分野は、四輪の実用化が進む一方で、二輪では、ほとんど実例がない。山本氏は、「まずはスピーディーに開発して導入すうことを目指した」と話す。

 ただホンダの二輪開発部門であるホンダモーターサイクルには、ハードウェアの開発実績はあってもソフトウェアの領域には慣れていない。「つながるバイクの開発に向けたスピードアップやサービス運用の知見が乏しく、開発後のサービスの改善にも不安があった」(山本氏)。

 そのため二輪部門だけでの開発は難しいと判断し、四輪部門の本田技研工業との横断プロジェクトを結成。「開発におけるリソース不足については最初から外部企業の力を借りることにした」(山本氏)。検討の結果、四輪のコネクテッドカーで実績があるスマートドライブとの共同開発を決めた。

電動スクーターとリート管理システムを投入

 先行するのはビジネスバイクの分野。2020年4月に新型の電動ビジネススクーター「BENLY e:(ベンリーe)」を発表した(図2)。配達などの用途を想定しバッテリーユニットを交換式にした。充電時間を待たずにバイクを利用できるため業務の継続を可能にする。

図2:2020年4月に発表した電動ビジネススクーター「BENLY e:(ベンリーe)」(山本氏のプレゼン資料より)

 このBENLY e:にコネクテッド機能を付加し、事業者向けの車両管理システムとして提供するのが「ホンダ・フリートマネジメント」だ。構想から半年というスピードで開発した。「スマートドライブが四輪向けに提供しているフリートマネジメントのサービスを元に、二輪にフィットさせた機能を中心に構成している」(山本氏)という。

 ホンダ・フリートマネジメントは、走行中の位置情報をリアルタイムに管理できるシステム(図3)。危険な走行をした場所の可視化や、特定エリアにバイクが出入りすれば管理者にメールを送る「自動フェンス」機能もある。移動データから日報を自動作成することで、従業員の業務負荷も軽減する。管理者と従業員の双方が業務の効率化を図れるというわけだ。

図3:ホンダ・フリートマネジメントが提供する機能の例(山本氏のプレゼン資料より)

 将来的には、運転者の乗り方のクセを掛け合わせ、部品劣化の予測モデルを作り、最適なメンテナンス時期の案内機能なども実装する計画だ。

 ホンダ・フリートマネジメントのサービス開始は2020年夏を予定する。システム構築は完了しているものの、「ホンダとしては初の取り組みなだけにトライアル運用を重ねているところ。しっかりとテストし商用利用に臨みたい」(山本氏)という。

 また、通信モジュールを使えば、BENLY e:だけでなく、「スーパーカブ」など既存のエンジンバイクにも対応できる。対応車種を増やし、業務用バイクのコネクテッド化を拡大したい考えだ。