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日本郵船、自律船での人とコンピューターの役割定めたフレームワークで船級認証を取得

DIGITAL X 編集部
2020年6月8日

日本郵船は、グループ会社のMTIと開発している有人の自律船において、実運行時の人とコンピューターの役割分担などを定めたフレームワークに対し、日本海事協会からコンセプト設計の船級認証を2020年2月20日に取得した。自律船の船級認証の取得は国内初という。日本郵船が2020年5月14日に発表した。

 日本郵船が今回、日本海事協会からコンセプト設計の船級認証を取得したのは、有人自律船における人とコンピューターの役割分担などを定めた「APExS:Action Planning and Execution System(開発コード)」。操船に必要な乗組員の状況認識と意思決定をコンピューターによる情報処理やリスク分析によって支援しながら、乗組員の承認を得てコンピューターが操船するためのフレームワークである(図1)。

図1:有人自律船のためのフレームワーク「APExS:Action Planning and Execution System(開発コード)」の概念

 船級認証は、設計から製造状態、運用手順などの安全性を検査・認証するもので、保険料率などを決める際の指標にもなる。APExSについては、(1)人とコンピューターとのコミュニケーションにおいては、設計、手順、トレーニングを適切に実行すれば許容できるレベルまでリスクを低減できる、(2)従来の最大リスクであるヒューマンエラーを大きく低減することが確認されると同時に、日本海事協会の基準をクリアした。

 日本海事協会の同協会は、国際的な認証機能を持つ日本の第3者機関。2020年1月には「自動運航、自律運航に関するガイドライン」を発行している。自動運航・自律運航技術に関する概念設計から設計開発、搭載、運航中の保守管理までの各ステージにおける要件を網羅的にとりまとめたものである。

 有人自律船は、操船者の判断や操作をコンピューターが支援することで高度な運航を可能にする運航体制を備える船舶である。日本郵船は、有人自律船を安全運航に有効だとして、同社の研究開発子会社のMTIや、国内外のパートナーとともに研究開発を進めきたほか、APExSの開発では日本海事協会とともにシステムの使用条件やバックアップ体制など安全性について検証してきた。

 日本郵船は、2018年からAI(人工知能)を使った操船支援システムの開発に取り組むなど、自律船の開発に取り組んできた。2019年9月には、有人自律運航船に向けた自動運航の実証実験に成功してもいる。日本近海において同社保有の大型自動車専用船(7万826トン)に他船との衝突を回避するプログラムを搭載し、陸上オフィスからの遠隔支援によって操船業務をサポート。より安全性と効率性の高い運航が可能になることを確認した(図2)。

図2:2019年9月に実施した有人自律運航船の自動運航時の航路

 日本郵船は今後は、APExSをもとに自律船のための技術開発を加速させる考えだ。

 海難事故の約8割は不十分な見張りや操船ミスなどのヒューマンエラーに起因すると言われている。人の強みとコンピューターの特性を組み合わせることで、これまで以上に航行の安全性を高めることが求められている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日本郵船
業種物流
地域東京都千代田区(本社)
課題船舶の運航の安全性を高めたい
解決の仕組み操船者の状況認識や意思決定をコンピューターでサポートし、乗組員の承認のもと操船をコンピューターが操船できるようにする
推進母体/体制日本郵船、MTI、日本海事協会
活用しているデータ自船や他船の位置、運航速度、地形など船舶が安全に運航するための情報
採用している製品/サービス/技術有人自律船のためのフレームワーク「APExS:Action Planning and Execution System(開発コード)」(日本郵船とMTIが開発)
稼働時期2020年2月20日(日本海事協会による船級認証の取得時期)