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DMG森精機、AGVの遠隔操作と工作機械の無人運転に向けた5G活用を伊賀事業所などで実証実験

DIGITAL X 編集部
2020年6月15日

工作機械大手のDMG森精機が、AGV(自律走行型ロボット)の遠隔操作と工作機械の無人運転に5Gを使用する実証実験に取り組んでいる。ロボットの遠隔操作は、NTTコミュニケーションズとローカル5Gを使って、工作機械の無人運転はKDDIと5Gを使い、それぞれ有効性を検証。ロボットと工作機械の性能強化を図るのが狙い。2020年5月21日に発表した。

 DMG森精機が実証するのは、AGV(自律走行型ロボット)の遠隔操作と工作機械の無人運転に、高速通信などが可能な5Gを利用した際の有効性。三重県伊賀市にある伊賀事業所を主な実験場に、2020年5月21日から取り組んでいる(図1)。検証に基づき、開発中のAGVや工作機械の機能強化を図り、デジタルファクトリーの実現に取り組む製造業などに提案したい考えだ。

図1:DMG森精機が5G/ローカル5Gの実証実験を開始する三重県伊賀市にある伊賀事業所(左)と、実験対象のAGV(自律走行型ロボット)と工作機械

 まずAGVの遠隔操作の実証実験は、NTTコミュニケーションズ(NTT Com}と実施する。伊賀事業所にローカル5Gネットワークを構築し、生産現場におけるローカル5Gの電波伝搬および通信品質を調査・測定しながら、AGVを遠隔操作する(図1)。実験期間は2021年4月までを予定する。

図2:AGV(自律走行型ロボット)の遠隔操作にローカル5Gを活用することで期待するメリット

 DMG森精機は現在、AGV「WH-AGV5」の開発を進めている。測域センサーなどを搭載した無人搬送車で軌道レールなしに走行する。ローカル5Gの活用により、AGVの位置情報と稼働情報を従来以上に高い精度で取得できると考える。

 高精細なデータを基に、自動走行の精度や安全性の向上と、データ処理の負荷をエッジコンピューターに委ねることに夜車体の軽量化など、AGVの高性能化が図れると期待する。

 加えて、超高速・多数同時接続・低遅延という5Gの特性を生かし、複数のAGVや設備を連携させ、工場全体を監視するなど、より高度な生産改善が可能な製品やソリューションを開発する。

 一方、工作機械の無人運転の実証は、KDDIと実施する。伊賀事業所と東京グローバルヘッドクォータ(東京都江東区)に5G環境を構築し、デジタルファクトリーの実現に向けた共同実験に取り組む。具体的には、DMG森精機が開発する「AI切りくず除去ソリューション」に5Gを導入し、その有効性を確認する。

 AI切りくず除去ソリューションは、工作機械内部に設置するカメラ画像から、切りくずの堆積場所と堆積量をAIで推論し、切りくずを最適に除去できる洗浄経路を生成・計算する仕組み(図3)。工作時に発生する、切りくずは、稼働停止や加工不良の要因になるためだ。

図3:DMG森精機が開発する「AI切りくず除去ソリューション」における画像認識の例(左)と、切りくずを除去する自動洗浄ノズル

 実験では、高速・大容量という5Gの特徴を生かし、工作機械内における大量の画像データの収集を加速し、より高度なAI機能の実装が可能かどうかを検証する。

 伊賀事業所と東京を5Gで結ぶことで、工作機内の画像だけでなく、各種センサー情報など大容量データを収集し、生産現場の状況をより正確かつリアルタイムに把握できるようにする。そうした情報を活用し、工作機械の性能を最大限に発揮するための技能向上策などを開発していく。

 5G環境を想定し今後は、ロボットと人が共存するなかで、工作機械のワークの着脱や、工程間搬送、変種変量・多品種少量生産、24時間連続稼働などが可能なデジタルファクトリーの実現に向けた取り組みを進めていく。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名DMG森精機
業種製造
地域三重県伊賀市(伊賀事業所)と東京都江東区(東京グローバルヘッドクォータ)
課題デジタルファクトリーで利用されるAGV(自律走行型ロボット)や工作機械の機能強化を図り製品の競争力を高めたい
解決の仕組み5G/ローカル5Gを活用し、多種多様なデータを大量に収集し、AIなどで分析することで性能を強化する
推進母体/体制DMG森精機、NTTコミュニケーションズ、KDDI
活用しているデータAGVや工作機械の稼働データ、切削場面の画像データ、生産設備の稼働データなど
採用している製品/サービス/技術5G/ローカル5G(NTTコミュニケーションズとKDDIが提供)
稼働時期2020年5月21日(実証実験)