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鯖やグループ、さばの養殖モデルの確立に向けたデジタル活用を実証実験

DIGITAL X 編集部
2020年6月25日

さば寿司の製造販売などを手掛ける鯖やグループが、さばの養殖モデルの確立に向けてデジタル技術を活用する実証実験を2020年5月28日から実施している。経験と勘に頼らないさばの養殖事業の全国展開を目的に、NTTドコモと提携した。同日に発表した。

 鯖やグループは、さば寿司を製造・販売する鯖や、サバ料理専門店を運営するSABAR、サバの海面養殖などを手掛けるフィッシュ・バイオテックの3社からなり、さばの生産から販売、観光資源としての活用までを手掛けている(写真1)。

写真1:鯖やグループが養殖するさば

 今回、フィッシュ・バイオテックが和歌山県串本町に保有するさばの養殖場において、さばの養殖にデジタル技術を活用する実証実験を開始した。経験や勘に頼らずに展開できる、さばの養殖事業を確立するとともに、さばの養殖を手掛けるためのスタートアップ環境を提供し、同事業への新規参入を後押しするのが狙いだ。そのためにNTTドコモと提携した。

 実験は2020年5月28日から2021年3月31日にかけて実施する。さばの成長に影響する環境要因を分析するために、養殖生け簀内の水温や塩分濃度、溶存酸素量といった水質データを収集。作業日誌を作成するアプリケーションを使って給餌量と給餌のタイミングを記録するほか、カメラなどで観察したサバの摂餌行動や残った餌の量などの情報を集める。

 それら情報は、養殖管理クラウドで一元管理し、生育途中でも生存率や、飼料の転換効率(飼料を与えたことによる体重の増量効果を示す数値)など、養殖業における経営指標を可視化する。そこから、生存率と飼料転換効率を高めるのに必要な条件を導き出す計画だ(図1)。

図1:鯖やグループが取り組む実証実験の概要(左)と養殖管理クラウドの画面例

 鯖やグループによれば、さばは栄養価が高く人気もあるものの、近年は漁獲量が減少し、需要に対する供給量が追いついていない。

 一方で、さばの養殖は、他の魚種と比べて斃死率が高く、また費用の多くを飼料が占めている。鯖やグループは、さばの養殖にデジタル技術を活用することで、養殖サバの供給拡大とともに、飼料の給餌量を最適化することで利益率を高めたい考えだ。廃棄食品などを使った魚の成長率を高める飼料も開発する。

 また、養殖さばの出荷量は、まだ少なく市場の認知度は低い。鯖やグループは、養殖さばの生育の様子を映像配信するなどして、養殖さばの認知度拡大にも取り組むとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名鯖やグループ
業種農林水産
地域和歌山県東牟婁郡串本町(グループのフィッシュ・バイオテックが保有するさばの養殖場)
課題さばの養殖技術を確立するとともに利益率を高めたい
解決の仕組みさばの生育環境などをデジタル技術を使って収集・可視化し、効率のよりさばの養殖を可能にする
推進母体/体制鯖やグループ(鯖や、SABAR、フィッシュ・バイオテック)、NTTドコモ
活用しているデータ(1)餌の種類・給餌量・斃死数などサバ養殖に関する作業記録、(2)給餌行動・残餌量・体長など生育管理情報、(3)水温・溶存酸素量・塩分濃度な海洋の状態に関する情報、(4)気象情報や資金情報などのオープンデータ
採用している製品/サービス/技術水温や塩分濃度などのモニタリング技術やクラウド、作業日誌の記録アプリなど
稼働時期2020年5月28日から2021年3月31日(実証実験期間)