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埼玉県、地域の高齢化問題の解決に向けたオープンイノベーション事業を開始

JEITAが共創プログラムの一環としてプロジェクトを支援

池田 真也(DIGITAL X 編集部)
2020年7月22日

埼玉県は、県内での少子高齢化に伴う社会課題を解決するためのオープンイノベーション事業を立ち上げた。3つのワーキンググループを置き社会実装を目指す。電子情報技術産業協会(JEITA)がプロジェクト支援に参画する。2020年7月20日に発表した。

 埼玉県および埼玉県産業振興公社が立ち上げた「社会課題解決型オープンイノベーション支援事業」は、民間企業と共同でプロジェクトを推進し、少子高齢化に伴う社会課題の解決を図るもの。「先端技術を積極的に社会実装し、社会課題の解決と成長産業の創出という双方の達成を目指す」(埼玉県 産業労働部 先端産業 課長の斎藤 豊 氏)。

 公募により、イノベーション支援事業として3つのワーキンググループ(WG)を採択した(写真1)。WG1がアバターロボットを活用した災害に強い社会の構築、WG2が高齢化社会のアシストを目的とした小型無人搬送車を用いた無人車両実証試験、WG3が医療・介護現場での有益な歩行評価を可能にする自動歩行計測システムの開発である。

写真1:オープンイノベーション支援事業の主な参画者。左から、JEITA 事務局長の井上治 氏、ステンレスアート共栄 代表取締役社長の永友 義浩 氏、埼玉県産業労働部先端産業課長の斉藤 豊 氏、avatarin 代表取締役CEOの深堀 昂 氏、RDS 代表取締役社長の杉原 行里 氏、埼玉県産業振興公社新産業振興部長の島田 守 氏

 WGの中核になる民間企業は、WG1ではANAホールディングス傘下でアバターを開発するスタートアップ企業のavatarin(アバターイン)。埼玉県に本社を置くレンズメーカーのタムロンと共同で、遠赤外線カメラを搭載したアバターロボットを開発し、医療従事者が発熱や感染症を遠隔から診断できるシステムを構築する。

 WG2のステンレスアート共栄は、精密板金加工などを手掛ける企業。GNSS(全球測位衛星システム)や画像センサーを用い、設定されたコースを自動で走行する商品配送用の小型車を開発することで、高齢者や外出困難者などを支援できるようにする。

 WG3の中核になるのはRDS。カーボン素材を使った部品や車いす、あるいはロボットなどの開発を手掛ける研究開発型の企業だ。今回は、人を追従するロボットで、歩行データを取得し、RDSが持つ歩行の特徴データベースと照合することで病気の可能性を発見できるようにする。

 プロジェクトにおいて埼玉県は、各WGが実施する実証実験の“場”となる施設の提供や関係機関との調整などを担当。埼玉県産業振興公社が、専門コーディネーナ―を用意し、埼玉県内の中小企業とのマッチングや技術的な助言を担う(図1)。

図1:オープンイノベーション支援事業における各組織の役割、社会課題の解決と成長産業の創出を両立する

 またプロジェクマネジメントを電子情報技術産業協会(JEITA)が担当する。JEITA 理事 事務局長の井上 治 氏は「JEITA共創プログラムの一環として推進する。連携の中心に立ち、各WGの開発・実証に伴走する。JEITAが主催するSociety 5.0に向けた展示会『CEATEC』などを通じ、実績を社会に浸透させる広報業務も担う」と話す。

 埼玉県は、65歳以上の高齢者人口の増加が全国のなかでも早期に進んでいる。「日本の地域別将来推計人口」(2018年推計、国立社会保障・人口問題研究所)によれば、2040年には総人口の3分の1が高齢者になり、生産年齢人口はピーク時の7割程度まで減少すると見込まれている。

  埼玉県の斎藤氏は、「埼玉県では、2014年(平成26年)度に先端産業創造プロジェクトを開始し、開発支援に取り組んできた。今年度は、これまで以上に出口ベース(社会実装)を意識している」と語る。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名埼玉県
業種公共
地域埼玉県
課題地域の高齢者の増加や生産年齢人口の減少が進んでいる
解決の仕組みオープンイノベーション事業を立ち上げ、民間企業と共同で最新技術を使った社会課題の解決策を開発し社会実装する
推進母体/体制埼玉県、埼玉県産業振興公社、電子情報技術産業協会(JEITA)
活用しているデータワーキンググループの取り組み内容による(遠赤外線カメラの撮影データや自動走行データなど)
採用している製品/サービス/技術ワーキンググループの取り組み内容による(アバターロボット、自律走行ロボット、歩行測定技術など)
稼働時期2020年7月(ワーキンググループのプロジェクトの開始時期)