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長谷工コーポレーション、タイルの打診検査にMRを使うシステムを本格導入
長谷工コーポレーションが全社目標としてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り組んでいる。その一環として、マンションの外壁タイルの打診検査にMR(Mixed Reality:複合現実)技術を使うシステムを開発した。アウトソーシングテクノロジーと日本マイクロソフトとの共同開発によるもので、3社は今後、建築・不動産業界に向けた生産性向上策として拡販する。2020年7月6日に発表した。
長谷工コーポレーションは2020年、全社目標としてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を掲げ、建築業における課題解決に取り組む姿勢を打ち出した。それに先立ち2016年から最先端技術導入に向けたプロジェクトチームを結成し、具体的な解決策を開発してきた。
その成果の1つが、マンションの外壁タイルの打診検査にMR(Mixed Reality:複合現実)技術を適用した「AR匠RESIDENCE(エーアールたくみレジデンス)」だ。2020年6月に実施した実証実験では、検査に伴う文書の参照や作成を含め、検査業務全体の約30%の効率化が確認できたという。
長谷工コーポレーションの取締役常務執行役員である楢岡 祥之 氏は、「従来は2人体制だった検査を1人で実施できる。検査ごとに必要だった点検用図面の準備を一掃でき、報告書の提出も自動化できており確実に短期化できる。加えて、新型コロナ禍にあっては、マンション居住者の安全・安心にも貢献できる」と大きな期待を寄せる。
打診検査の効率化を阻む3つの要因をMRで解消
ビルやマンションといった建物は、現地生産かつ一品生産のため、その管理の自動化や効率化が進みにくい。にもかかわらず近年は、顧客の要求水準が高まり、検査や書類作成など現場の負担が増えている。加えて少子高齢化を背景に熟練技術者の確保は年々困難になる一方だ。
外壁の打診検査もそうした業務の1つ。建築基準法により10年ごとの実施が義務付けられている。一般に打診検査は、壁を叩いて、その音から異常の有無を判断し、検査結果を点検図面に書き込む。報告書には、検査中に撮影する証跡用写真を添付して取りまとめる必要がある。
その打診検査の効率化に向けて長谷工コーポレーションが問題視したのが、(1)検査前に紙の点検図面の準備に工数を要す、(2)管理組合への報告書作成業務が煩雑、(3)手作業により報告書提出までに一定の期間を要す、の3点だ。
これら問題点の改善を狙って開発したのが「AR匠RESIDENCE」である。MR(Mixed Reality:複合現実)型のスマートグラス「HoloLens 2」(マイクロソフト製)を使うことで、主に紙に依存する問題の解決を図っている。
その使い方はこうだ。AR匠RESIDENCEには事前に、対象物件の3D(次元)データを登録する。現場に出向いた作業者はHoloLens 2を装着し、まずはマンションに配置された位置情報用マーカーを読み取る。これで点検図面のCG(コンピューターグラフィックス)をリアルな建物に重ね合わせた映像が確認できるようになる(図1)。
検査によりタイルの浮きやヒビなどを発見すれば、HoloLens 2のジェスチャー機能を使って作業者は手の動きだけで不具合点を検査表に入力する(図2)。その際、証跡用の映像もデータとして取得する。