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舞鶴市、京野菜「万願寺甘とう」の生産や台風・豪雨の防災にIoTの仕組みを活用

DIGITAL X 編集部
2020年8月14日

京都府舞鶴市が、京野菜の生産や台風・豪雨の防災といった地域課題の解決にIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みを取り入れている。京野菜の精算では、唐辛子の「万願寺甘とう」の生産にIoTを適応。防災では中小河川の水位上昇の予測にIoTを利用する。IoT技術を提供したKDDIが2020年7月22日に発表した。

 京都府舞鶴市が地域課題を解決し、市の持続性を高めるためにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)の仕組みの活用に取り組んでいる。

 1つは、2020年3月に開始した京野菜の1つ「万願寺甘とう」(唐辛子)の生産と供給拡大に向けた取り組み。ビニールハウスにIoTセンサーを設置し、栽培情報を収集している(図1)。

図1:「万願寺甘とう」(唐辛子)ビニールハウスに設置したIoTセンサーの構成図

 万願寺甘とうは、同市発祥の京野菜。「京のブランド産品」に認定されているがブランド基準が細かく、栽培が困難で収穫にバラツキが生じていた。加えて高齢化による労働力や後継者の不足が生じていた。

 IoTセンサーが収集するデータは、日照、温度、土壌EC(電気伝導度)、土壌温度、土壌pHなど。これらを10分間隔でクラウドに送信する。別に散水量を流量計センサーで計測しており、定期的にPCやスマートフォンに送ることで、クラウド上とデータと組み合わせて参照している。

 栽培データと生育状況との相関分析も進めている。2020年度の成果を基に、2021年度に収量が高い生産者の栽培データを地域で共有することで、収量の拡大を図りブランドの認知度向上を図る。

 IoTセンサーには、農業用センサー「Agri Palette」(Momo製)を採用し、KDDIが導入を支援した。

 もう1つの取り組みは、市内を流れる中小河川での降雨による水位上昇の予測。舞鶴市では近年、台風や集中豪雨による浸水被害が頻発している。中小河川は降雨から水位上昇までの時間が短く、避難を判断するための情報が不足していた。水位上昇の正確な予測により、避難行動に必要な時間を確保する。

 水位はIoT水位計やドローンで測定する。舞鶴工業高等専門学校が2019年1月から、これらの機器を使って降雨・潮汐と河川水位の関連性を検討し、誤差の少ない流出モデルを再現した(図2)。

図2:観測した河川水位と降水量から解析した河川水位の比較

 2020年3月には、上流部と下流部にIoT水位計を新設した。舞鶴高専は今後、複数個所での検証を進めながら流出モデルの高精度化を目指す。

 さらに、ドローンを活用した詳細な地形データの計測に取り組み、細かな地形変化や河川構造物が水位変化にもたらす影響も検討する。詳細地形とIoT水位計および流速計が取得する水位の詳細データを組み合わせた氾濫シミュレーションも実施する。

 水位計やドローンなどIoTの仕組みはKDDIが提供する。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名京都府舞鶴市
業種公共
地域京都府舞鶴市
課題(1)万願寺甘とうの安定生産と供給の拡大を実現したい、(2)豪雨の際に適切なタイミングとエリアで避難情報を発信できる体制を整備したい
解決の仕組み(1)IoTセンサーを用いて万願寺甘とうの栽培データを収集するとともに、高収量生産者の栽培データをモニタリング・解析して栽培知見を確立・共有できるようにする、(2)水位計やドローンなどを用いて河川の水位上昇予測に有効なモデルの作成や氾濫シミュレーションを実施する
推進母体/体制(1)京都府舞鶴市、KDDI、Momo(2)京都府舞鶴市、舞鶴工業高等専門学校、KDDI
活用しているデータ(1)万願寺甘とうの栽培関連情報(日照、温度、土壌EC(電気伝導度)、土壌温度、土壌pH、水量など)、(2)河川の水位情報および河川周辺の地形情報
採用している製品/サービス/技術(1)IoTセンサー、クラウド、(2)IoT水位計、ドローン
稼働時期(1)2020年3月20日、(2)2019年1月