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独ポルシェ、フルEV「タイカン」の製造ラインに無人搬送車を導入

DIGITAL X 編集部
2020年8月17日

独ポルシェは、同社初のフルEV(電気自動車)「タイカン」の最終組立ラインを無人搬送車(AGV)を使って構築した。工場建屋の立地上の制限を回避しながら製造ラインの柔軟性を確保した。制御技術などをを提供する独シーメンスが2020年7月14日(現地時間)に発表した。

 独ポルシェの「タイカン」は、同社初のフルEV(電気自動車)のスポーツカー。創業地である独シュトゥットガルトのツッフェンハウゼンにある旗艦工場で、2019年9月から生産されている。

 タイカンの最終組み立ての製造ラインの構築に当たって、コンベアベルトを使用せず、独シーメンス製の無人搬送車(AGV)を導入した(写真1)。AGVが特定の製造工程を受け持つステーションから次のステーションに車体を運ぶ。

写真1:無人搬送車(AGV)が製造ステーションから次の製造ステーションへ車体を移動させる

 AGVは製造ラインの動きと同期して走行する。たとえば、自動化されたタスクを実行する際はAGVを一時的に停止させる。タスクが終了すれば、AGVのスピードを加速させ次のステーションへ車体を運ぶ。

 タイカンの製造ラインにAGVを採用したのは、工場建屋に立地上の制限があったため。建物への高さ制限と、既存モデルの製造ラインとの共存だ。結果としてタイカンの製造ラインは、複数階のフロアをまたがり、車体を上下方向にも移動させる形になった(写真2)。

写真2:建設上の制約から複数フロアを活用して製造ラインを構築した

 製造ラインでは、AGVとドアコンベアシステムに加え、重量物用の傾斜式EMSハンガーも導入した。車体を両方向に110度回転させることで、車体のすべての個所にアクセスできるため、作業員は人間工学的に作業がしやすい姿勢を維持できるとしている(写真3)。

写真3:人間工学的に無理のない姿勢で作業ができるように重量物用傾斜式EMSハンガーが使用されている

 タイカンの最終組み立てプロセスは、自動化用フレームワーク「TIA(Totally Integrated Automation)ポータル」(独シーメンス製)を使って工程管理している。今回、製造ラインで使用する移送技術の全要素を4.5カ月で導入した。同様のプロジェクトと比較して、コンベア装置の導入開始から車両の生産開始までにかかる時間を約半分に縮められたという。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名独ポルシェ
業種製造
地域独シュトゥットガルト ツッフェンハウゼン
課題物理的な制限のある工場において、最新のEVの最終組み立てラインを構築したい
解決の仕組み無人搬送車(AGV)を導入し、製造ステーション間で車両を移動させる
推進母体/体制独ポルシェ、独シーメンス
活用しているデータ車両の製造状況に関する情報
採用している製品/サービス/技術無人搬送車(AGV)、自動化用フレームワーク「Totally Integrated Automation(TIA)ポータル」(いずれも独シーメンス製)
稼働時期2019年9月