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横浜市立大学、遠隔診療を支援する遠隔ICUシステムを構築

池田 真也(DIGITAL X 編集部)
2020年8月18日

横浜市立大学は、医療施設の診察を遠隔から支援するための遠隔ICUシステムを構築し、2020年10月から運用を開始する。支援センターに常駐する専門医が、ネットワーク越しに複数の医療施設での診療を支援する。2020年7月30日に発表した。

 横浜市立大学が構築したのは、遠隔ICUシステム「Tele-ICU(テレアイシーユー)」。横浜市立大学附属病院に支援センターを設置した。支援センターと3つの連携先施設などが持つICU(計40床)をネットワークで接続し、支援センターに常駐する集中治療専門医と看護師が診療を遠隔で支援する(図1)。

図1:Tele-ICUによる遠隔診療の運用イメージ

 Tele-ICUの構築・運用により、専門医の不足を補い、医療の品質向上や医師の負担軽減を目指す。遠隔診療のため、医療従事者の感染リスクの防止や感染防護着などの消費削減なども期待する。

 2020年9月末までは、模擬患者による連携先施設との患者情報の共有や、支援センターからの円滑な診療支援の方法などを検証する。2020年10月から、連携先施設の実際の患者を対象に、平日の日中帯の診療支援を順次開始する計画だ。

 ICU等は現在、日本全国に約1万7000床ある。これに対し集中治療専門医は約1850人と不足している。重症患者の治療は昼夜を問わない医療体制が必要なため、医師の長時間勤務や精神的負担が課題だ。

 Tele-ICUでは、専門医が連携先施設の医療従事者とWeb会議を介して支援する。患者のバイタル情報やリアルタイム映像、電子カルテ情報、重症度スコアなどを共有しながら治療方針を相談する。担当医は、集中治療専門医からの助言を元に治療やケアの質の向上を図る。

 システムの統合管理画面では、すべての連携先施設について、同意済みの患者情報を参照できる。病院別の管理画面では、連携先施設ごとの患者一覧から、電子カルテや医療画像(PACS)などが参照できる(図2)。

図2:Tele-ICUの統合管理画面(上)と病院別管理画面のイメージ

 Tele-ICUは、横浜市立大学がシステムの全体像を構想し、NTTデータが構築した。開発に当たっては、連携先施設のシステム画面を共有する仕組みを採用することで、出力するデータの種類を抑え、システム導入期間とコストを低減したという。

 両者は今後、連携施設の拡大やシステムの機能拡充、医療の品質向上や医師の働き方改革も推進していくとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名横浜市立大学
業種医療・健康
地域横浜市
課題集中治療専門医の人員不足や、重症患者の治療における医師の負担を削減したい
解決の仕組み遠隔診療により、支援センターに常駐する専門医師と、連携施設の担当医が、患者の情報をリアルタイムに共有しながら診療方針を相談できるようにする
推進母体/体制横浜市立大学、NTTデータ
活用しているデータ患者のバイタル情報や患者の映像情報、電子カルテ、重症度スコア
採用している製品/サービス/技術――
稼働時期2020年10月(実際の患者を対象にした運用開始時期)