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慶応義塾大学、各種証明書をスマホアプリに発行するためのID基盤をブロックチェーン技術を使って開発

DIGITAL X 編集部
2020年11月5日

慶応義塾大学は、在学証明書や卒業見込証明書などをスマートフォン用アプリケーションに対し発行できるようにするために、デジタルアイデンティティ基盤の実証実験を開始する。各種証明書などをオンラインで発行するのに必要な機能や標準化などを検証する。2020年10月26日に発表した。

 慶應義塾大学は、各種証明書の発行手続きをオンライン化し、在学証明書や卒業見込証明書などをスマートフォン用アプリケーションから発行できるようにする。そのために、本人を認証するためのデジタルアイデンティティ(ID)基盤の構築を実証する(図1)。大学の教務窓口での身分証明書の提示や書面による諸手続きをオンラインで完結できるようにするのが目的だ。

図1:デジタルアイデンティティ基盤の利用イメージ

 すでに2020年9月から試験版のデジタルアイデンティティ基盤のトライアルを実施している。今後、2020年10月から2021年2月にかけて、実証実験に向けた基盤の開発を進め、2021年3月から想定するシナリオを使っての機能や標準化などを検証する。

 実験では、民間企業との連携や大学間の情報連携も考慮し、国際的な標準仕様への適合と相互運用を実現する。前者では、就職活動中の学生に対してスマホアプリで卒業見込証明を発行し、採用企業には、成績証明書や卒業見込証明書を提供するなどを想定する。

 後者では、地域や国をまたいだ転校や編入などが対象になる。オンライン授業でも受講生の本人確認が円滑になれば、学生の取得単位に伴う大学間の情報連携に関する手間を削減できるとしている。

 開発するデジタルアイデンティティ基盤では、名前、住所、年齢などの各種属性に加え、卒業証明書、研修終了証などの各種証明データをオンラインで確実に管理・利用できることを目指す。そのために、標準化が進んでいる汎用的なデジタル証明書技術である「Verifiable Credentials(VC)」と、ブロックチェーン技術を使って特定の企業・組織に依存しない分散型識別子となる「Decentralized Identifiers(DID)」を利用する。

 大学が発行するデジタルアイデンティティの永続性が一般に検証・利用可能になれば、信用情報や、迅速な本人確認を必要とする金融やヘルスケア、政府サービスといった分野への広がりが期待できる。

 将来的には、オンラインショッピングなどにおける決済システムや、通学定期などの商用システムと連携した学生割引の適用など、学生の利便性向上も目指す。

 基盤の開発・実証は、慶應義塾インフォメーションテクノロジーセンターと慶應義塾大学SFC研究所ブロックチェーン・ラボ、および伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、Japan Digital Design、JCB、NTT西日本、BlockBaseの5社とが共同で実施する。基盤の構築は、米マイクロソフトと連携して進める。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名慶應義塾大学(インフォメーションテクノロジーセンターおよび慶應義塾大学SFC研究所ブロックチェーン・ラボ)
業種教育
地域東京都港区(本部)
課題学生が各種証明書の発行手続きをオンラインで完結できるようにしたい
解決の仕組みスマートフォンアプリを使って各種証明書を発行するための次世代デジタルアイデンティティ基盤を構築する
推進母体/体制慶応義塾大学インフォメーションセンター、慶應義塾大学SFC研究所ブロックチェーン・ラボ、伊藤忠テクノソリューションズ、Japan Digital Design、JCB、NTT西日本、BlockBase、米マイクロソフト
活用しているデータ学生の名前、住所、年齢などの各種属性に加え、卒業証明書、研修終了証などの各種証明データ
採用している製品/サービス/技術「Verifiable Credentials(VC)」、「Decentralized Identifiers(DID)」
稼働時期2020年10月(実証実験の開始時期)