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第一生命、バックオフィスに加え顧客接点の自動化にもRPAを適用へ

指田 昌夫(フリーランス ライター)
2020年11月4日

大企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)では、既存事業の生産性向上を避けては通れない。定型業務を自動化するための手段の1つがRPA(ロボティックプロセスオートメーション)だ。第一生命保険もバックオフィスの自動化をRPAで推進する1社である。同社執行役員の排田 恭一 氏が、同社が利用するRPAのベンダーであるBlue Prism Japanが2020年10月に開いたオンライン記者説明会に登壇し、DXの考え方とRPAの位置づけについて説明した。

 第一生命保険がRPA(ロボティックプロセスオートメーション)のプロジェクトを開始したのは2016年のこと。当時、日本ではデスクトップ型RPAが普及し始めていた頃である。

運用重視で当初からサーバー型を指向

 だが同社では、「長期的な視点からサーバー型RPAにターゲットを定めていたと執行役員の排田 恭一 氏は話す。英Blue Prismの製品を軸に検討していたが、サーバー型RPAを効率よく安定して運用するには運用管理が重要だと考え、検討は慎重に進めていたという。

写真1:第一生命 執行役員 排田 恭一 氏

 運用ノウハウを学ぶため、Blue Prismの英国本社にも出向いた。そこでは「技術の話ではなく、『RPAガバナンス』というテーマで、運用に関する同社の思想などを聞いた。組織として運用する能力・スキルが非常に重要であることを学べたことが導入の決め手になった」と排田氏は明かす。

 現在、第一生命が取り組んでいるデジタル化によるオペレーション改革は、(1)顧客接点のデジタル化と、(2)業務オペレーションの自動化の2つの軸で進められている(図1)。これまでRPAは、後者の定型業務の大規模な自動化のために、AI-OCR(人工知能技術を使った光学式文字読み取り装置)などと共に導入してきた。

図1:第一生命におけるデジタル化による業務改革の範囲

 2019年度末までに、約700業務、延べ20万時間強の業務時間削減を実現した。今後も適用業務を拡大し、2020年度末に1600業務(36万時間)の、2021年度末には2100業務(41万時間)の削減を目指している。

 さらに今後は、より顧客接点に近い部分の業務の自動化にもRPAの適用に力を入れる計画だ。「コンタクトセンターや営業部員が受けている顧客からの問い合わせに対し、チャットボットとRPAを組み合わせた、新しいサービスチャネルを作りたい」(排田氏)考えだ(図2)。

図2:顧客接点にもRPAによる業務改革を図る