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三井化学、化学プラントの運転効率を高めるために操作をAIでシミュレーション

DIGITAL X 編集部
2020年11月27日

三井化学は、化学プラントの運転効率を高めるための運転支援システムを構築した。シミュレーター上にプラントのデジタルツインである「ミラープラント」を再現し、AI(人工知能)で分析する。結果、手動での操作と比較して、操作時間を40%削減できたという。2020年11月16日に発表した。

 三井化学が構築したのは、化学プラントの運転支援システム(図1)。プラントの運転状況を示すデジタルツインである「ミラープラント」を構築し、論理的思考が可能というAI(人工知能)を使って最適な操作方法をシミュレーションする。訓練用の実プラントに適用したところ、運転員による手動操作と比較して、操作時間を40%削減できることが確認できたという。

図1:運転支援システムが無駄のない操作を運転員に掲示する

 化学プラントでは、生産量や生産品を変更する際には運転変更操作が発生する。ただプラントの状態は、ゆるやかに変化するため、最適な運転状態になるまでに、運転操作に数時間から半日ほどを要することがある。運転変更の試行を繰り返すと原料やエネルギーが無駄にもなるため、効率的な運転操作が必要だった。

 これまでも強化学習技術を使って最適な操作方法を導く仕組みを開発してきたが、操作量しか出力できず、その操作を実行すべきかどうかを運転員が判断することが困難だった。

 今回開発した運転支援システムは、プラントの状態に合わせて無駄のない操作を提示する際に、操作の可否を運転員が最終判断できる機能を実装した(図2)。具体的には、マニュアルにひも付いた操作の根拠と、想定されるシミュレーション結果を提示することで、操作の可否の判断材料を提供する。

図2:運転支援システムに用いた技術

 運転支援システムは、ミラープラントを生成する「オンラインダイナミックシミュレーター」(オメガシミュレーション製)と、NECと産業技術総合研究所が開発した論理思考AIを連携させて構築した。運転変更のための最適操作を学習する強化学習技術を独自に拡張したとしている。

 今後は、実証実験で得られた成果を発展させ、AIとシミュレーターを用いた運転支援技術を開発し、化学プラントの運用効率を高めることに貢献したいとしている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名三井化学
業種製造
地域東京都港区(本社)
課題運転員が手動操作していた化学プラントの運転効率を高め、変更操作に要する時間を短縮し、原材料とスチーム量を削減したい
解決の仕組みAIとシミュレーション技術を活用して化学プラントの運転に最適な操作方法を提示する
推進母体/体制三井化学、NEC、産業技術総合研究所、オメガシミュレーション
活用しているデータ化学プラントの運転状況を示すミラープラント(デジタルツイン)
採用している製品/サービス/技術オンラインダイナミックシミュレーター(オメガシミュレーション製)、論理思考AI(NECと産業技術総合研究所が開発)