• UseCase
  • 製造

日産、生産ラインの構築や計画変更を高速化するAIシミュレーション技術を実証

DIGITAL X 編集部
2020年12月11日

日産自動車は、生産ラインの事前評価と運用を効率化するためにAI(人工知能)シミュレーション技術を使う実証実験を実施した。結果、生産ラインの構築・計画変更を10倍以上高速化すると同時に、予測誤差を6分の1以下にできたという。技術を提供したNECと産業技術総合研究所が2020年11月24日に発表した。

 日産自動車は、AI(人工知能)シミュレーション技術を使って、生産ラインの事前評価と運用を効率化するための実証実験を実施した(図1)。実際の生産ラインで利用している生産シミュレーターの設定にAIを適用したところ、生産ラインの構築・計画変更を10倍以上高速化できたという。生産効率の予測誤差も、約20%から3%に改善した。

図1:AIシミュレーション技術を採用し生産計画の変更を高速化した

 生産ラインの構築や計画変更においては一般に、生産ラインの各工程の平均所要時間や人員・ロボットなどの配置をパラメーターとして設定しシミュレーションを繰り返す。日産も生産シミュレーターに投入するパラメーターは人手で設定していた。

 今回の実証実験では、AIにより精緻なシミュレーションを短時間で自動構築できるようにした。パラメーターの設定時間を、従来の約1カ月から1日に短縮できたという。

 AIシミュレーション技術には、NECと産業技術総合研究所(産総研)が開発した技術を採用した。実データを補完するシミュレーションデータを自動的に生成することで、少ないデータから最適な意思決定の支援が可能だとしている(図2)。実験では、最終工程のスループット約1カ月分のデータを基に、生産ライン計画の作成や高精度な予測を実現した。

図2:AIがシミュレーションに必要なデータを補完して予測する

 NECと産総研は今後、新規生産ラインの早期構築や既存生産ラインの迅速な計画変更により、機会損失の削減・在庫削減が可能になると見る。原価見積もりの精緻化や追加投資の削減が可能なことも確認した。同技術を自動車メーカーに適用すれば、数百億円規模の効果があると推定している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日産自動車
業種製造
地域横浜市(本社)
課題人手による生産シミュレーターの設定を自動化し、生産ラインの構築・計画変更のシミュレーション精度と効率を向上させたい
解決の仕組みAIシミュレーション技術を導入し、より精緻かつ高精度のシミュレーションを実行できる仕組みを構築した
推進母体/体制日産自動車、NEC、産業技術総合研究所
活用しているデータ生産ラインの各工程での平均所要時間や人員・ロボットの配置などの情報
採用している製品/サービス/技術AIシミュレーション技術