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高知県、収穫高を高めるための農業データの連携基盤を構築

DIGITAL X 編集部
2021年2月1日

高知県は、農産物の出荷データや農業ハウス内にある機器の稼働データを一元管理するデータ連携基盤を構築・稼働させたと2021年1月20日に発表した。同基盤を活用しデータ駆動型農業を実現し、収穫高の拡大を目指す。

 高知県が構築した「IoP(Internet of Plants)クラウド」は、同県における農業関連データを一元管理するためのデータ連携基盤(図1)。ハウス栽培などにおける育成方法をデータ駆動型に変えることで、収穫高を高めるのが目的だ。同県では、IoPクラウドの始動を『「もっと楽しく、もっと楽に、もっと儲かる」農業の実現に向けた最初の一歩だ』としている。

図1:IoPクラウドの概要

 IoPクラウドには、高知県で盛んなハウス農業などに関するデータおよびJA高知県が持つ農産物の出荷量がリアルタイムに登録され、互いに関連づけられる。農業関連データとしては、ハウス内の温度や湿度、CO2濃度、カメラ映像、機器の稼働状況などが含まれる。

 出荷に関するデータは当初、約3000戸の農家のデータを対象にする。2023年には県内にある農家のほぼ全数に当たる約6000戸のデータ集約を目指す。これほど多くの農家がクラウドシステムでつながるのは高知県が初めてで、日本最大規模だという。

 生産者はIoPクラウドにアクセスし、農作物の育成策と収量の要因分析や、育成環境の制御、ノウハウの向上、グループでの情報共有、遠隔での監視・制御、自動制御などが可能になる。

 IoPクラウドでは、農業分野の生産活動を産学官連携で支援する仕組みとしても機能する。具体的は、(1)高知県やJA高知県によるデータ分析による詳細かつ即時性の高い栽培指導、(2)大学など研究機関による植物体の生理に基づく生育予測などの研究と実装、(3)民間企業による高機能な農業用機器やソフトウエアの開発などだ。

 IoPクラウドのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を公開し、データ連携が可能な機器やソフトウエアの開発促進を図る(図2)。IoPクラウドの一部をテストベッドとしても提供する。

図2:IoPクラウドAPIのイメージ

 将来的にはIoPクラウドや農業分野におけるデータの収集・活用ノウハウを他県や他の一次産業に展開していくことを視野に入れている。

 IoPクラウドの構築には、JA高知県や、高知大学、高知工科大学、高知県立大学、IoP推進連携、高知県工業会、高知県IoT推進ラボ研究会など県内の各機関が産学官連携で取り組んできた。

 県外からも、東京大学大学院情報学環 越塚研究室や、九州大学、デジタルハリウッド大学、農研機構等の大学や研究機関、NTTドコモ、富士通、四国電力などが参画している(図3)。今後も、多くの企業や大学、自治体、農家の参画を募っていく。

図3:IoPクラウドの推進に参画している組織

 IoPクラウドは、クラウドサービス「AWS(Amazon Web Service)」(米Amazon.com製)上に構築されている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名高知県
業種公共
地域高知県
課題高知県の農産物の収穫高を上げたい
解決の仕組み農業ハウス内の育成状況のデータと農産物の出荷データを集約・分析するためのデータ連携基盤を構築し、同基盤上で生産者のノウハウなどを共有し向上を図る
推進母体/体制高知県、JA高知県、高知大学など産学官からの参画者
活用しているデータ農業ハウス内の温度や湿度、CO2濃度、カメラ映像、機器の稼働状況などのデータ、JA高知県がもつ農産物出荷量のデータ
採用している製品/サービス/技術クラウドサービス「Amazon Web Service」(AWS製)、IoT技術
稼働時期2021年1月20日