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旭酒造ら日本酒メーカー6社、サプライチェーンの効率高めるRFID活用を実証実験

DIGITAL X 編集部
2021年2月24日

旭酒造ら日本酒メーカー6社が、日本酒のサプライチェーンの効率化および商品情報の消費者への提供にRFID(ICタグ)を活用する実証実験に、みずほ情報総研らとともに取り組んでいる。みずほ情報総研が2021年2月8日に発表した。

 日本酒のサプライチェーンの効率化に向けた実証実験に取り組むのは、旭酒造(主要商品名は「獺祭」、以下同)、黒龍酒造(「黒龍」)、車多酒造(「天狗舞」)、関谷醸造(「蓬莱泉」)、辰馬本家酒造(「白鹿」)、南部美人(「南部美人」)の6社。日本酒市場で起こっている課題をRFID(ICタグ)を導入することで解決が可能かどうかを検証する。

 課題とは、(1)在庫管理が煩雑、(2)酒造メーカーのブランド価値を毀損する転売の発生、(3)消費者への情報提供が不十分といった点。そのため実験では、(1)在庫管理の効率化、(2)商品のトレーサビリティの確保、(3)新たな顧客接点の構築、(4)海外輸出品の温度管理の4点に取り組む。

 在庫管理の効率化に向けた実験は、車多酒造が協力し2020年11月~2021年1月に実施した(図1)。銘柄種ごとの本数と位置を把握する。具体的には、日本酒瓶を日本酒瓶保管専用ケース「P箱」に詰めてパレットに積む際に、瓶とP箱、P箱とパレットのそれぞれを関連付けたうえで、倉庫内でのパレットの位置情報を関連づけて管理する。

図1:車多酒造での在庫管理の実証実験の様子

 トレーサビリティの確保の実験は、旭酒造が協力し2020年9月に実施し、一部を2020年12月に再確認した(図2)。銘柄ラベルの貼付面にRFIDを貼り込み、出荷時には輸送用の段ボール箱単位に一括で読み取り。入荷・開梱時には段ボール箱単位と瓶の2次元バーコードとを読み取り、メーカーの出荷本数と特約店での取り扱い本数を高い精度で把握できるようにした。

図2:旭酒造でのトレーサービリティの実証実験の様子

 顧客接点の構築実験は、関谷醸造が協力し2021年2月に実施する予定である。日本酒を提供する店舗において、日本酒にRFIDを飲用グラスにNFCタグにそれぞれ添付。冷蔵庫にRFIDリーダーを装着し、日本酒を取り出した際に取得した銘柄情報をNFCタグに関連付ける。顧客は客席に備え付けたスマートフォンでNFCタグを読み取れば、グラスに注がれている日本酒に関する情報を参照できる。

 海外輸出品の温度管理に関する実験は、南部美人が協力し2021年2月~3月に実施する。輸出品ケースの表面と内部に温度測定・記録機能付きのRFIDを貼付し、メーカーから消費者の手元までの各所で温度履歴を収集することで、酒造メーカーが確認できるようにする。

 これらの実証実験は、経済産業省の「令和2年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業(RFIDを活用したサプライチェーン効率化・価値創造可能性調査)」の一環。受託した、みずほ情報総研が事務局として実施している。実験には、酒造メーカーに加え、標準団体やRFID関連機器ベンダーなどが参加している(表1)。

表1:実証実験の参加企業/機関
役割企業/機関名
酒造旭酒造、黒龍酒造、車多酒造、関谷醸造、辰馬本家酒造、南部美人
標準化GS1 Japan(流通システム開発センター)
電子タグ/ラベル提供エイブリィ・デニソン・ジャパン、大阪シーリング印刷、サトー、ダイオーエンジニアリング、高桑美術印刷、凸版印刷
周辺機器等提供IDEC AUTO-ID SOLUTIONS、IMPINJ,Inc.、アクア、シーデックス、ゼブラ・テクノロジーズ・ジャパン、デンソーウェーブ、フェニックスソリューション、マスプロ電工
事務局SPAZIO IDEA、大和コンピューター、みずほ情報総研
デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名旭酒造、黒龍酒造、車多酒造、関谷醸造、辰馬本家酒造、南部美人など
業種製造
地域実験に参加する酒造メーカーの本社・倉庫など
課題日本酒市場における在庫管理やトレーサビリティなどの課題を解決したい
解決の仕組みRFID(ICタグ)を活用し、在庫管理やトレーサビリティ、消費者への情報提供などに向けた仕組みを構築する
推進母体/体制旭酒造、黒龍酒造、車多酒造、関谷醸造、辰馬本家酒造、南部美人、みずほ情報総研など
活用しているデータ日本酒の銘柄、在庫/出荷データ、商品情報、流通時の温度など
採用している製品/サービス/技術RFID(ICタグ)
稼働時期2020年9月~2021年3月(実証実験の実施期間)